| ふと、夜中に目が覚めた。 悠里と真奈美を起こさないようにそっと布団から抜け出す。 窓の外がなんだかキラキラしている。 窓際によって外を見ると雪が降っていた。静かにしんしんと。 どれくらい積もっているんだろう、と視線を地面に向けると目があった。一が居る。 向こうも驚いたように目を丸くしていた。 そして、地面を指差す。 降りてこられるか、と聞いているようだったので頷いた。 足音を立てないように部屋の中を歩いてコートを一応手に持ち、そのままそっと部屋を後にした。 「いいなー」 真奈美が呟く。 起きていた。 うつらうつらしていたらが起き上がった。 そしてコートを持って外にでた。きっと一が居たのだろう。何となく、乙女の勘がそう言っている。 「北森さんも良い恋が出来るといいわね」 独り言のつもりが返事がある。 真奈美が寝返りを打ってそちらに顔を向けると彼女もこちらを見た。 目があってお互いクスリと笑う。 「さんってば高校のときと同じように振舞っているつもりなんだろうけど、なんだかホントに可愛いの。あの時はホントに『頼りになる生徒』って感じだったけど。今は恋の話がしたくてウズウズしちゃうわ」 「真壁先生たちもあの2人を見守っている目が優しいんですよね。去年、聖帝に来て色々と暗躍していた人とは思えないです、さん」 「くしゅん」とロビーに出た途端がくしゃみした。 「あ、寒いか?やっぱ、部屋に戻って寝るか?」 一が心配そうに顔を覗きこむ。 「噂、されてるんだと思う。いやぁ、モッテモテー」 笑いながらが言う。 それでも一は心配そうな視線を向けたままだ。 「これだけの銀世界。滅多にお目にかかれないよ?」 「でも、は今北海道に住んでるだろう?」 「いいの!一と見るの!!」 そう言ってコートを着て一の手を引いて外に出た。 まあ、コートを着ているからと一も抵抗はしなかった。 外に出ると、部屋に中から見たよりも雪の降り方が意外と激しかった。 「寒いからフードも被ってろよ」と一がの頭にコートのフードを被せた。 しかし、フードを被ると見上げたときにフードが邪魔になって一を見ることが出来ない。 けど、心配してそう言ってくれているんだから... 繋いだ手から伝わる体温はとても温かく、それに比較して空気は冷たい。 少し顔とか、肌が出ているところが痛いくらいだ。 「さみーなー」 そう言って一は繋いでいる手をそのままの手ごとポケットにしまった。 「わ、あったかい」 そう言っては一を見上げた。案の定、見上げてもパーカーが邪魔で一が見えない。 「やっぱ、これ邪魔だな」 そう言って一がのパーカーを脱がせ、そのときにはもう一の顔が目の前だった。 チュッとキスをしたのは額に。 ビックリして目を瞑ったの瞼にも唇を落とす。 「冷えたなぁ...ホントに大丈夫か?」 「だいじょうぶ」 自分が誘っておいて何だが、心配になってくる。 だが、まあ。本人がそう言うなら... 「けど、足は寒いよな?」 はこの旅館までブーツで来た。だが、さすがにここに出てくるのに浴衣なのに態々ブーツを履くことはなく、旅館が置いていたサンダルを突っかけて出てきているのだ。 足元はやっぱり寒い。 ひょい、と一がを軽く抱き上げた。 「うわぁ」とは驚いて思わす声を漏らす。 「ははっ。これなら足元は寒くないだろう?んでもって、の顔が近いから良く見れる」 そういった一は顔を寄せた。 唇がひんやりと冷たい。 「キスもしやすい」 「ばか」 拗ねたように呟くに「ははっ」と笑って「そうだよ」と言った一はまたキスをする。 何度か重ねるとひんやりしていた唇はだんだん熱を帯びてくる。 どれくらいの時間、何度唇を重ねたのか分からないが、が突然笑い出す。 一は首を傾げた。 「どした?」 「一、雪が積もってる」 手を伸ばして一の頭に積もっている雪を払った。 「んー、じゃあ。まあ。戻るか。ここ以外は随分冷えてるし」 そう言ってまたキスをした一が、とても残念そうに苦笑して旅館に足を向ける。 「こりゃ、温泉入んないと風邪を引くかもね」 やっぱりちょっと体が冷えたなー、と思ってが言った。 「んじゃ、一緒に!」 嬉しそうに言った一に「準優勝」とが返し、その一言に一はうな垂れる。 「次は優勝するんでしょ?」 の言葉に苦笑して「ああ」と一は頷いた。 |
桜風
10.9.10
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