| 「えー!うそ、マジですか、サン!」 何だって自分は正直に答えたのだろうか... は深く後悔した。 「いやー、一君可愛そう」 「そーですか」 「絶対溜まってるよ。ホモサピエンスだろうと動物なんだからね。絶対に溜まってるね。かわいそー!!」 はげんなりとして彼女を見た。 「は..女だからそうでもないだろうけど。男は溜まったら出さなきゃいけないのよ、分かる?遠距離だからまあたびたび出来ないのは仕方ないけど、一緒に居られる時間があるのに手を出させないって...はぁ」 最後にはこれ見よがしのため息だ。 も負けじとため息をついた。 「でも、たぶん一君は初めてじゃないと思うのよね」 「は?!何で?」 「勘。というか、あの子もててたでしょ?しかも少し荒れてた時期があったって聞いたわ」 は肯定も否定もしなかったが、それは肯定ととられても仕方ない。 「やけを起こしてやっちゃっててもおかしくない!」 「...言い切るのやめませんか?」 「やめない!で、今のところあの子は子持ちじゃないんでしょ?だとしたら、避妊の仕方がちゃんと分かってる証拠!ほら、安心!!今度イタリアに遊びに行くんでしょ!たぶん、あの子上手だろうから安心して任せちゃいなさい。あ、でも体力馬鹿か。そこらへんはちゃんと話し合って壊れない程度に抑えてもらうのよ?」 何の話だ、とは頭を抱えた。 先ほど母親が聞いてきたのだ。 「で、一君とどこまでいったの?」 さらりと、夕飯のおかずを聞くようなトーンで。 「一番遠いところは..」とが考えていると「ねえ、それはマジボケですか?」と冷え切った瞳を向けられてやっと彼女が聞きたい内容を理解した。 「別に、普通だよ」 「と、言うことはちゃんとやってることはやってるのね」 うんうん、安心したとか言っている母に首を傾げる。 しかし、その反応を見た母がくわっと目を見開き、さらに椅子を蹴って立ち上がった。 「まさか、まだ清らかな体なの!?」 「大声出すな!!」 反射的にが怒鳴るが、母はめげない。 そして、冒頭の言葉が彼女の口から発せられたのだ。 足取り重くイタリアの空港のロビーを歩く。 バカンスで来たのに... なんだか気の重くなる話をされての訪問だ。おかげで自然と足取りも重くなる。 「!」 名前を呼ばれて顔を上げると満面の笑みを浮かべた一が手を振っている。 慌てては一に駆け寄った。 「ちょっと、一ってばこの国でもかなり有名人なんでしょ!!」 小声で窘めるが、時既に遅く、一の周りにはファンが押しかけてきている。 「やべ!」といまさらこの状況に慌ててちょっと考えた挙句、「これ」とサングラスをに掛けてひょいと片腕で彼女を抱えてもう一方の腕での荷物を持って駆け出した。 「サングラス、押さえとけよ」 そうに声をかけ、周囲にはイタリア語で「ごめんなー」といいながらトップスピードで駆けた。 駐車場に停めていた車に乗り込んで走り出す。 「...大丈夫なの?」 サングラスを返そうとしたら「それはがかけてろ」といってダッシュボードからもう1本取り出して掛ける。 「オレは別にいいけど、はあんまり好きじゃないだろ?」 こくりと頷くに一は苦笑した。 「迂闊でごめんな」 「ううん、迎えに来てくれてありがとう。嬉しかったよ」 一は驚いたようにを見た。 「な、何?」 じっと一が見るものだから居心地悪く、が声を出す。 「あ、いや。うん、なんでもない」 何か、ちょっといつもよりも割増で素直だな、と思ったのだ。 可愛い。けど、今すぐ手を出したらもの凄く怒られる。運転中だし。 ああ、もう。何てことだ!! そう思っていると、信号が赤となりブレーキを踏む。 「」 名前を呼ばれて「ん?」と一の方を見るとチュッとキスされた。 「ちょ!運転中はダメだって言ったじゃない!!」 以前頻繁に運転中にも一がキスしてくるので、安全面の問題からが規制を掛けたのだ。 「いや、わりぃ。今日の、めちゃくちゃ可愛いから。ああ、勿論いつも可愛いけどな」 この人の照れとかそういう感情はどこに行ってるのだろう... 一は割りとこういうことを軽く言えるので、イタリアでも普通にやってこれるんだろうな... いや、でも。イタリアの人は誰彼かまわずこういうことを言うのか?それが当たり前で、挨拶のようなものだったら一もいろんな人に言っているのか?? そんなことを思っているとなんだかムカムカしてきた。 「あ、あれ?、本気で怒った?なあ、!ごめん、運転中にキスはもうしないから!!」 クラクションが鳴らされて前を見ると信号が変わっている。 一は慌ててアクセルを踏んだが、運転に集中できない。 せっかく遊びに来たが初日からご機嫌斜めだ。 あー、オレの馬鹿!! 心の中で自分を罵倒する一はどうやったら機嫌が直るだろうかと検討を始めた。 ...鰹節か! 悩みに悩んだ挙句、ご機嫌取りとして使用するベストなものが『鰹節』。 家に帰って取って置きの最高級の鰹節をに献上した挙句、やはり怒られたのは言うまでもない。 |
桜風
12.7.15
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