Dear my friends + 10





なぜかいつもよりもテンションが微妙に高い父を加えた夕食が済んだ。

父が不用意に「悠里先生の手料理が食べたいなー」とか言ったせいで悠里がその気になったが、が「セクハラだ!」と父親を叱り飛ばし、さらに、「あのおっさんの言葉が元で夕飯を作るなんてセクハラを容認しているようなものですよ!葛城先生のセクハラも許すんですか!?」と微妙に趣旨を変えた説得のお陰で彼女がキッチンに立つことはなかった。

あまりにも勢いのあるの言い様にの父は首を傾げていたが、悠里を説得している隙に星太が説明をした。

「獣医さんの作ったものが食べられるんだから、大丈夫だろう」

味オンチを通り越して味覚が麻痺しているのか、そんなことをさらりと言うが、

「余計なことをしたら、姉ちゃんにまた蹴っ飛ばされるよ」

と星太が言うと肩を竦めて口を閉じた。

娘とはああいう風なものでしか交流できないので彼女の繰り出す意外とキレのある技を多少食らうのは構わないが、明日からの共同研究に行けないのはまずい。

「しかし、あの子はどうやってあの数々の技を覚えたのかな?」

ふと疑問を口にすると

「姉ちゃん。お陰様で体は弱くなったけど運動神経は悪くないんだよ」

と星太が返す。

初めて知った。

娘の新しい面を知ることが出来て、何だか嬉しかった。

しかし、これを口に出すと物凄く冷ややかな視線を娘と息子に向けられるのは必至で、とりあえず黙っておいた。



書斎で論文を書いているとドアをノックされた。

「星太か?」

「おじさん、オレだよ。草薙一」

ああ、そういえば去年といういか今年の頭に電話で話しをしたな、と思いながら「どうぞ」と返した。

「どうした。そういえば、草薙さんは元気か?」

「あー、たぶん。ちょっとオーストラリアに引っ越したみたいで。元気だってメールとかはくるんだけど...」

面白いな、と小さく笑う。

「それで、どうしたんだ?私に用事なんてあるのかな?ああ、昼間は冗談めかしたけど、半分は本気だから」

何のことだろうと考えて『娘を嫁に〜』のことかと当たりをつけて苦笑する。

「嫁はまだだろう?オレ、学生だし。は体を直すことが先だし。てか、そうじゃなくて。今回オレたちがこっちに来た理由を話しておこうかなって」

「理由?」との父は聞き返す。

一は頷いた。

、今度誕生日くるじゃん?で、サプライズパーティをしようって思ってさ。おじさんも帰ってこれたらどうかなって。研究とか忙しいんだろうけど、1日くらい何とかなんねーかな?」

一の言葉に彼は唸る。

「申し訳ない」

そう言った。

ああ、やっぱり仕事かな、と思っていると

はいつが誕生日なんだ?」

と返した。

さすがに一は呆然とした。

「え、おじさん。もしかして、今までの誕生日を祝ったことないのか?」

「ない、な。そうか、誕生日か。夏だったか...」

信じられないといった表情で呆然としていた一だったが、気を取り直して続ける。

「今言ったようにサプライズパーティだからには内緒なんだけど、この家を使わせてもらう予定なんだ。星太にはもう話してる。あと、おばちゃんとこっちにいるじいちゃんばあいちゃんも来るって」

一の言葉に父は目を丸くした。

「獣医さんも来るのかい?んー、さらにドクターズもか...」

眉間を押さえながらそう言う。

「ダメなのか?」

「苦手なだけだよ。特に、ドクターズには冷たくされているからね」

苦笑しながら言うの父に「そうだろうなー」と一は納得していた。

何せ、娘の誕生日も把握していない父親だ。日付はともかく季節くらいは頭に入れていてもいいだろうに...

「まあ、戻ってこれたら戻ってくるよ。全力で」

肩を竦めながら殆ど前を向いているとは思えない返事をしたの父親に少しだけ反発心を覚えたが、それでもこの人はこういう人なんだろうと思って落ち着ける。

「じゃあ、よろしくな」

そう言って部屋を出ようとして足を止めて「おじさん」と言った。

「ん?どうした?まだ何かあるのか?」

「オレ、本気だから」

何を、とは言わずに宣言した。

その『何を』を察したの父がむっとした表情を浮かべる。

「さっき宣言したのになぁ。宣戦布告かね?」

「最悪、おじさんには勝てるって思ってる」

「目標が小さいな」

返された言葉にぐっと詰まりながら

「あと何年かしたら絶対に挨拶に来るかんな!待ってろよ!!」

と宣言して書斎を後にした。

あまりにもまっすぐな言葉を口にした一の幼さに思わず口元が綻ぶ。

「即行追い返してやる」

大人気なくそう呟き、論文の作成を再開した。









Next


桜風
09.4.10


ブラウザを閉じてお戻りください