| 夜中に喉の渇きを覚えて目を覚ます。 自分も随分図太くなったよな... そんなことを思いながら階下のキッチンに向かった。 他人と同じ空間にいても、我慢できる。 それがもっとも無防備になる睡眠時であるにもかかわらず。 もちろん、B6以外だったらダメだったと思う。 高校での生活が自分をこうも変えた。とても不思議だった。 リビングから明かりが漏れている。 こんな時間に誰が起きているのだろう... そう思いながら顔を覗かせるとソファに座っているが居た。 「」 瑞希が声を掛けると彼女は驚いた表情で振り返る。 「どうしたの?瑞希にしては宵っ張りじゃない」 そう言って持っていた小型ノートパソコンを閉じる。 「何か飲む?お茶作ろうか??」 が言うと瑞希は首を振る。 「水を飲みに来たんだ」 「もう遅いから井戸水は勘弁してね」 そう言いながら冷蔵庫に向かう。瑞希はが座っていたその大き目のソファに腰を下ろした。 「ねえ、。これで何かしてるの?」 病院でもずっと持ち歩いていた。 この部屋の中にはパソコンがある。だから、部屋から態々ノートパソコンを持ち歩く必要なんてないはずだ。 「んー、まあ。内容に関してはトップシークレットですけどね、『何か』はしてるよ」 笑いながら水が適量入ったグラスを差し出してきた。 「は秘密が多いよね」 以前渡米すると決めていたことも結局卒業式まで教えてもらえなかった。 少なくとも、自分は一とは違う角度からの幼馴染だから、ほかのメンバーよりも信用や信頼を得ていると思っていたというのに。結局皆と『同じ』だったのだ。物凄くつまらない。 「何言ってるのよ。『秘密』ってのは乙女の必須アイテムよ」 がからかうように言うと「何だよそれ」と瑞希が拗ねる。 「いつか分かるよ」 「僕が一番に?」 そう返した瑞希には目を丸くする。 「んー、一番はもう無理になったかも...」 苦笑しながら言うに益々瑞希は膨れっ面になる。 水をグラス半分くらい飲んだところで思い出した。 「ねえ、」 「秘密の内容は教えないよ?」 そんな言葉を返すに瑞希は少し不機嫌になる。 しかし、気を取り直して「違うよ。そうじゃなくて昼間に言っていたよね」と言った。 「何を..かな?」 「一番お金のかからない治療法って。あれって...」 瑞希が悲しそうな瞳で言葉を濁した。 「ああ、うん。そうだよ。新薬と、新しい治療法の被験者になってる」 が頷くと「何で!!」と瑞希が迫る。 持っていたグラスから水が少しだけ零れた。 「んー、そうね。心配してくれてありがとう。でもね。主治医はお祖母ちゃんとお祖父ちゃんだから。大丈夫だよ。瑞希を助けた人たちだよ」 瑞希がシンクタンクで研究対象とされていたところをいろんな方面からの圧力を掛けて開放させたのが、の祖父母だった。 この2人の人脈と権力を持ってすればこの国の中の大抵の研究機関に大きな圧力を掛けることができる。 「でも!」と言い募ろうとしていた瑞希だったが、が手のひらを見せて止める。 「そして、私が選んだの。被験者になることを。薬も治療法も一応この国の審査を通ったものだから。でも、心配してくれてありがとう」 そう言って微笑むを瑞希はそっと抱きしめる。 「瑞希?大丈夫だよ?」 「うん、わかった。けど、何かあったら絶対に僕に話してね。僕、絶対にを助けるから」 「はは、囚われたお姫様を助け出す童話の中の王子様みたいに?」 軽く笑いながらが言うと「そうだよ」と瑞希がまじめな顔をして答える。 間髪いれずに肯定されては一瞬言葉に詰まった。 「は、僕が守るから」 そう言った瑞希の腕の力が少し強くなる。 『抱きしめられている』ということを今やっと自覚したは多少なりとも戸惑いを覚えた。 しかし、その様子はおくびにも出すことなく「ありがとう」といつもの調子で返す。 体を離した瑞希はグラスに残っている水を飲み干した。 「じゃあ、おやすみ。秘密の内容は聞かないけど、早く寝ないと」 「そうね。先生が私よりも先に起きたらご飯作り始めるかもしれないもんね」 は頷いてそう言った。 ああ、本当だ。明日もの方が早起きしてくれないと... 瑞希は明日訪れるかもしれない地獄の朝食の時間を思い浮かべて「お願いだから、早く寝てね」と念を押して部屋へと戻っていった。 |
桜風
09.4.24
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