| 「では、後ほどこちらにお迎えに参ります」 4人で出かけて途中で翼と悠里を降ろしてそう言った永田は車を出した。 「さて、どこに行きましょうか」 助手席に座っているに声を掛けた。 「そうですね」 そう呟いては道を案内した。 「翼って何をプレゼントにもらったら嬉しいんですか?」 が問う。 いつも身に着けているものと言えば、高価なものだし、『モノ』に不自由していると印象は受けない。 「そうですね」 そう言いながら永田は顎に手を当てる。 「確かに、翼様は『モノ』に不自由はしていませんね。困りましたねぇ」 全く困った様子ではない永田の呟きにはため息をついた。本気で考えるつもりはないようだ。 まあ、そんなに短時間で決めなければならないことではない。 どの道、翼と合流しなければならないのだから、早々に決めても時間が余る。 本当に瞬だけで大丈夫かなー、とか思いながら永田と共にプラプラと街を歩いた。 暫くウィンドウショッピングをしていたが、それも長い時間は続けさせてもらえなかった。 本人は大丈夫だといっていたが、それでも体調を気遣った永田が度々休ませる。 公園だったり、カフェだったりと場所は色々だ。 「私、思ったんですけど」 つい1時間前にも休憩したはずだけどなー、と思いながらもカフェの椅子に座っているは呟く。 「モノに拘るのはどうかと思い始めまして...」 何の話だろう、と永田は静かに聴く。 「翼の誕生日プレゼントの話です」 なるほど、と頷いたは良いが「では、プレゼントは何になさるつもりですか?」と問うた。 「アルバム、とかどうですかね?」 「アルバムでございますか?」 「はい。本当なら写真を収めたアルバムをプレゼントをするのが一番だと思うんですけど、それはもう物理的に無理なので...だけど、たしか家にポラロイドカメラがあるんですよ。フィルムもあったと思うし。あれが一番現像が早いし、世界でたった一枚のものでしょう?すぐに皆で撮ってそれと一緒にプレゼントなんてどうですか?付加価値はプライスレスです」 笑って言うに永田は頷いた。面白いことを考えるものだ。 「では、アルバムを購入することにいたしましょう」 一方、別のショッピングモールを歩いている翼と悠里。 「ちょっと、翼君。いくらなんでもそれは...」 「Why!?何故だ?」 「だって、それはいくらなんでも高価すぎるわ」 翼が手にしているのはアンティークと呼ばれるもののティーカップだ。値札の『0』の数を数えていた悠里はその行為を途中で放棄せざるを得ない状況になった。 翼がスタッフに声を掛けて更にカードを取り出そうとしたのだ。 慌てて悠里がそれを止め、スタッフに下がってもらって今の状況と言うわけだ。 「しかし、良いものというのはそういうものだろう?」 昨年度1年間で随分『庶民』の感覚も覚えてくれたと思ったが... 悠里は一度深呼吸をする。 「そうね。でも、そうじゃない事だってあるのよ。価値があるものには中々値段をつけられないわよ。そう、Priceress!翼君の作った紙の花だって、決して高額なものではないでしょう?」 「何を言う。俺の作る紙の花の材料となっている紙は、一流の紙梳き職人の梳いた美しい紙を使う。その紙が安いはずがないだろう!?」 ああ、そうか... 挫けそうになるが、それは何とかこらえて悠里は頑張って説得を試みる。 なんと言っても、このへのプレゼントは皆でお金を出し合うもので、勿論それは当分となると話しているはずだ。翼だってその話を知っているはずだし、知らなくてもそうなっているのだからあまり高価なものとなるとそれぞれの負担が大きくなる。 「それに、さんの入院はもう少し続くみたいだから出来れば病院にも持っていけるものの方がいいと思わない?せっかくのプレゼントですもの」 「...そんなに悪いのか?」 こちらに来てからと話をしてはいるが、病気のことは触れないでおいた。どこまで込み入った話をして良いのか分からなかったから避けたのだ。その話に触れなければ話題がないというわけでもなかったし。 「やっぱり難しいことは難しいみたいね。でも、元気になってきてるって。一度酷く壊したから戻るのに時間がかかってるだけだって言ってたからそんなに心配要らないって。さんに聞いたら大丈夫じゃなくても『大丈夫』って言いそうだから星太君に聞いてみたのよ」 身内を亡くすことを知っている翼は心から安堵したように「そうか」と息を吐いた。 「しかし、せっかくの誕生日プレゼントでそんな安っぽいものを貰って嬉しいものなのか?」 『安っぽい』って... しかし、ありきたりなものというのは悠里としても避けたい。と、いうか。唯一の女性ということで皆が期待してくれているのだから、その期待に応えて『女性ならでは』のアイデアを出したい。 でないと、センス的なもので言ったら翼は勿論、悟郎だってこういうのは得意だろうから自分がこうしてプレゼントを買う役を担った意味がなくなってしまう。 とりあえず、悠里がプレゼント買出し係となったのは、確実に料理をさせないための生徒たちの作戦だということを知らないので真剣にそんなことを思っていた。 「あ!」と悠里が声を上げた。 「何だ、担任!」 突然声を上げられて不覚にも驚いた翼が声を上げる。 「ねえ、コレはどうかしら?」 そう言って提案したプレゼントに翼は首を傾げる。 「そんなものでいいのか?」 「これこそ、プライスレスよ!」 胸を張っていう悠里に翼は肩を竦めた。 「まあ、そういうならそうなんだろうな」 反対してもそれに代わるプレゼントが思い浮かばないのと、『庶民感覚』にイマイチ自信がないため、悠里の提案に従うことにした。 |
桜風
09.5.8
ブラウザを閉じてお戻りください