Dear my friends + 17





宴もたけなわと言ったところでが皆に声を掛ける。

写真を撮りたい、と。

先ほど、自分記憶の中にあったポラロイドカメラを発掘してきてちゃんと動くことも確認した。

「へー、ポラロイドなんて懐かしいじゃない」

「君のだよ」

獣医の言葉に天文学者が言う。

「そんなもの持ってたっけ?」とつぶやきながら首を傾げる彼女を無視しては撮影の準備をする。

タイマーがついているから誰かが写れないという状況にもならない。

これだけの大人数、ちゃんとフレームに収まるのだろうか。

そんなことを思いながらもは並び方を指示して一応全員入れるようにした。

「撮るよー」

そう言ってスイッチを押して駆けてくる。


現像した写真を持ってはリビングから出て行った。

どうしたのだろう、と思いつつも、彼女は一人で行動していることが多かったからあまり気にすることなく皆はまた先ほどと同じように誕生日パーティの続きを楽しんでいた。

「どうしよう...」

が呟く。

誕生日プレゼントってどういうタイミングで渡すものなのだろうか。

撮った写真は結構うまく出来たと思う。

購入したアルバムの一番最初に入れて包装しなおした。

次のステップに『渡す』というものがあるのだが、そのタイミングが全く分からない。他人との交流を絶っているとこういうときに困るものなのだな、と今更ながら納得した。

さん」

廊下で蹲ってそう悩んでいると頭上から声を掛けられて慌てて立ち上がる。

「衣笠先生!?」

「気分でも悪いんですか?」

「あ、いえ。そうではなくて...!」

両手をぶんぶん振りながらは否定して、先ほど自分が悩んでいたことを話す。

「ああ、そういうことですか」

そういえば表情が豊かになったかな、と思いながら衣笠は微笑んだ。

「そろそろ、誰かが切り出しますよ。元々さんの誕生日パーティのつもりだったからプレゼントする事だって考えていたはずですしね」

そうか、とすとんと納得した。

「そういえば、衣笠先生は何故アメリカに?」

「姉に誘われたんですよ。先生がさんの誕生日のお祝いに一緒に行かないかって誘ってくださったんだけど、どうかってね。勿論、僕もお祝いしたかったので嬉しい誘いでしたけど。誕生日おめでとう、さん」

微笑む衣笠に「ありがとうございます」と照れくさそうには言葉を返す。


暫くして、衣笠の言ったとおりプレゼントがある、との祖母が言い出した。

「翼の誕生日のことまで知らなかったから、申し訳ないがだけにってなるけど」と前置きしてプレゼントを渡す。

「とりあえず、ここに居る『家族』からだよ」

驚いたように周囲に居る『家族』を見渡した。

「開けてみて。絶対に気に入る!」

自信満々に言ったのは獣医をしている元母親だ。

逆にその自信満々な態度に不安を覚えて恐る恐るプレゼントを開けると、それは辞書だった。

周囲はポカンとしている。

プレゼントの中身を知らされていなかった衣笠の姉や勿論衣笠も驚いた。弟は天を仰いでこのプレゼントの失敗を嘆いたが、「何で...」とは満更でもない表情だ。

「辞書って普通毎年買わないでしょう?でも、古いと載っていない言葉もある。さらに、の住んでいるこの国で日本語のこれだけ厚い辞書を買おうと思ったらもっと大きな街まで行かないといけないだろうし、ネットで購入するにも病院からだと難しい。と、言うわけでこれです」

得意気に解説する彼女には拍手した。そのとおりだ。

最近物語を書くのに辞書が欲しいと思っていた。元々持っているものではなく、もっとマニアックな言葉の意味が載っているような分厚いの。

<中々やるねぇ>

祖父が感心したように呟いている。

彼は連絡を取って別のプレゼントを推薦していたのだが、「私に考えがあるの」と自身たっぷりに言う娘に任せたのだ。

殆ど毎日顔を合わせていた自分たちよりも彼女のことを考えて理解しているかのような顔をしている娘に少しだけ悔しく思いながらも諦めて溜息を吐いたのは祖母だ。

あれだけ子供を放っておいて、そして長らく一緒に暮らしていない娘の欲しいものを当てた。

母親の面目を守った娘に苦笑した。たぶん、今迄で一番娘のことを考えたのだろう。

仕方ないので、彼女に花を持たせてやることにした。

「では、次は俺たちからだな」

そう言って翼がに自分たちが選んだプレゼントを差し出した。

「何?」といいながら包装紙を剥がす。

は思わず永田を見た。

永田もさすがに予想できていなかったようで驚いた表情でを見ていた。

被ってしまった...

「本当は写真を入れてプレゼントしたかったんだけど...今回の旅行でみんなそれぞれデジカメ持っているから、それを現像してまた贈るわ。さん、病院でも写真を飾っているって聞いたから...」

そう悠里が補足する。

「ありがとうございます」

嬉しいけど複雑だ。

「じ、じゃあ。翼にプレゼントね」

そう言って物凄く気まずそうにはプレゼントを渡す。

「開けるぞ」と言いながら包装紙を剥がした翼は固まった。

「被っちゃったのよ...」

しかも、デザインまで似ていると来た。

申し訳なさそうに言うだったが、翼は「ありがとう」と微笑んだ。

「写真、1枚だけ入れているんだけど」

の言葉を受けて翼はアルバムを開いた。

最初に挟んであったのは、先ほど撮影したばかりの集合写真だ。

「20歳の翼の最初の写真だよ」

が言うと翼は目を細めた。

「ありがとう」

自然と零れた言葉には嬉しそうに微笑む。

喜んでもらえたみたいで安心だ。永田を見上げると彼も安心したように微笑んでいた。









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桜風
09.5.22


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