| と翼の誕生日パーティーは夜中まで続いた。 と、いうか大人全員がお酒を飲んでしまったので帰れなくなり、騒ぎも終わりそうもないので眠いものは寝るということになって気が付いたら朝になっていたという者が多数。 ちなみに、はベッドで寝たし、悠里と衣笠の姉はとりあえず部屋につれて帰った。それだけは絶対に外せない。あの父親が居るところで無防備に眠らせておくことなんて絶対に出来ない。 朝早く起きて朝食の支度を始めるためにリビングに顔を出すとだらしなく雑魚寝している『家族』がゴロゴロと転がっている。 溜息を吐いてもう一度階段を上がり、シーツを取ってきて彼らに掛ける。夏だったか良かったものの、冬だったら全員風邪を引いている。自身の体調管理くらいきちんとしてほしいものだ。 「おはよー...」 まだ意識は夢の中に居るような声が耳に届いた。 は冷蔵庫の中から水を取り出してコップに注ぎ、それを持っていく。 「二日酔いですか?」 「ありがと」と言いながらコップを受け取った元母親はそれを一気飲みした。 「弱くなったわ...」 「自分の年齢考えなよ」 呆れながらはそう言ってキッチンに戻る。 「朝ごはん何?」 「一応、トーストとサラダと目玉焼き?」 「私、お粥がいい」 は溜息を吐いて「アナタは子供ですか...?」という言葉を飲んだ。昨日沢山炊いたが、それでもまだお米は残っているらしい。 「分かった」と返すと「ありがとう」という声が届く。 「獣医さんは、何で獣医さんになったんですか?」 が問う。彼女が家に居たときにはこんな質問はしなかった。 母は立ち上がってキッチンの近くに椅子を引いて座る。 「何でアニマルドクターかって?反抗期だったのよ。両親がドクターでしょう?周囲も勿論両親も私が当たり前にドクターになるって思ってたのね。それがイヤで、『ドクターにはなるけど、アニマルドクターになってやる!』って。で、ついでに国も飛び出してとっとと日本人になって。あたし、20年近くアメリカ人だったからね」 ああ、そういえばその話は瑞希の祖父から聞いたことがあるような気がする。 結局自分の祖母と母親は似たもの同士だったのだ、と。 「だって、似たようなものでしょう?理系が得意なのに絶対に理系には進みたくないって思ってるでしょ?大学の学部だって文系ど真ん中だし」 言い当てられては渋い顔をする。そのとおりだ。答えが決まっている理系の方が好きだし得意だが、両親が理系の人間だからそう言う意味では理系が好きではない。 「ついでに『教師』とか『研究者』ってのには絶対になりたくないって思ってるかな?」 「わかるわ〜」 笑いながら同意されて、は益々顔を歪める。 そうやって自分の感情を素直に見せてくれる娘がかわいらしい。最近になってやっと子供が「可愛い」と思うようになった。何が原因か分からないが、それはそれで大発見だ。 「何か手伝おうか?」 声を掛けると間髪入れずに 「あなたの『手伝い』は手伝いになりませんから、ノーセンキュー」 と返されてやはり可愛くない、と自分の感情を訂正する。 「そういえばさ」と思い出したように母が言う。 「何?」 「瑞希君が心配してたわよ」 何だろう、とは首を傾げた。 「あんたが今何してるから知ってるか、って。昨日こっそり聞かれたわ。教えてあげないの?」 「教えてあげない」と笑いながら言うに「意地悪ね」と母も笑う。 「そういえば、はあのB6だっけ?の中に好きな子とかいないの?勇君でもいいわ」 ゴン、と大きな音が鳴った。どうやら祖父母たちが寝ているところからのようだ。 「寝返りじゃないの?」 不思議そうな表情を浮かべているに対して、軽く背後に視線を向けた母が言う。 実際のところ、母がそんな問いかけをしたので「そんな奴がいたらまずは俺を倒していけ」的な考えを持っている祖父と「娘は嫁にやらん。これ、8割くらい本気です」な父親が過剰なまでに反応しそうになったので祖母が2人を同時にどついたのだ。とりあえず黙ってろ、と。 「いない、かな?だって、ほら。両親が両親だから」 と満面の笑みで目の前に居る母親を見た。 居心地悪そうに彼女は視線を外して「まあ、焦ることないし。別にあの子達じゃなくたっていいしね」としどろもどろに言う。 祖父と父は心の中で小さくガッツポーズ。祖母は少し寂しそうに溜息を吐いた。 「それはそうと。それ、どうしたの?」 ノースリーブのパーカーを着ているの肩を指差して問う。 は首を捻って自身でも確認しようとしたがうまく見えない。 「火傷の痕かしら?」 「やばっ!見える?」 「うーん、チラチラとチラリズム?」 母の答えに呆れたように溜息を吐きながらは「着替えてくる」と言ってエプロンを脱ぎ、慌てて自室へと駆けて行った。 「あれ何?」 振り返って彼女が問うと「去年の文化祭だって言ってたよ。処置が少し遅れたからって」と言いながら祖母が起き上がる。 「詳しく」と母が促すと衣笠がムックリと起き上がって説明をする。 「何だ、苛めとかじゃないんだ?」 「さんをいじめようものなら、草薙君と斑目君がまず黙っていませんよ?」 衣笠の言葉にそれもそうだな、と納得した。 「それはそうと、獣医さん」 そう言いながらゆっくりと起き上がったのはの父親で、 「何ですか、天文学者さん」 と彼女も応える。 「何でさっき、にあんな質問したんだい?」 「だって、あんな美少年たちと一緒に居るんだよ?ある意味、より取り見取り!女の子憧れの逆ハーレムじゃない!!あんな美少年たちが娘の彼氏とか婿とかになったら私がウハウハ!眼福よ!」 胸を張ってそんなことをいう彼女に <あんた、もう法律上ではの母親じゃないでしょう。のことは娘って呼べてもその婿は息子とは呼べないんじゃないかい?> と、祖母が冷静に突っ込みを入れる。 「じゃあ、再婚しようか。天文学者さん?」 軽く言う彼女に彼は「別にいいけど、獣医さん?」と肩を竦めた。 <いい加減にしなよ。あんたたちがそうやって人の気持ちを軽く考えているからあの子もあんなになったんだろう?反省してないのかい?!> 叱責されて彼女は肩を竦める。 <冗談よ。分かってる。あの子と、一君たちが今現在大変苦労しているのはあたしたちのせいなんでしょう?それに再婚しても5秒で離婚しそうだしね> 降参ポーズをとってそう言った。 <同感だねぇ> 父もそう言って苦笑した。 「先生たちを見ていると、本当にさんの苦労がしのばれますね...」 呆れたように衣笠は呟いた。 |
桜風
09.6.5
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