Dear my friends F 1





約束の時間の少し前に正門前に着いた。

外観からしてすでに様子が変わっている。

「あの...」

メガネを掛けた物腰の柔らかそうな人物がに向かって声を掛ける。

彼はある名前を口にした。

「あ、はい。私です」

彼が口にした名前はのペンネームだ。

本名でも良いじゃないか、と周りに言われたが、友人たちを驚かせるには本名では面白くないと思って適当につけたペンネームだったが、驚かせるよりも前に彼らに自分の仕事を知られてしまい、ペンネームをつけなくても良かったと知るのは彼女が作家活動を始めて3年後のことだ。

「理事長がお待ちです」

彼の言葉には驚く。

「え、理事長さん、ですか?」

「ええ。先生からの取材の申し込みともなれば理事長がお話を伺いたいと言っておりますので」

さすがに、理事長に会えるなんて思っていなかったは正直動揺した。

が、彼女のそんな様子に気づく人間なんて殆ど居ない。

まして、彼女と初対面の上條と名乗った案内役の男に気づかれるべくもないのだ。


「失礼します、理事長」

理事長室に案内された。

はきょろきょろと思わず部屋の中を見渡す。

「先生」と上條に声を掛けられては慌てて姿勢を正して理事長に向き直った。

「初めまして、理事長の佐伯と申します」

はペンネームで初めまして、と挨拶をし、「本名はと言います」と付け加えた。

「先生は、こちらの学園の卒業生だそうですね」

そう言いながら彼はに向かって座るように仕草で勧めた。

「失礼します」と言って座り心地が良すぎるソファに座り「ええ」と先ほどの佐伯の言葉に応える。

「世界的に有名な作家先生が、ウチに取材と仰ったときには正直驚きましたが...」

は何となく児童文学を書いていた。

それがどうしたことか、かなりの人気を博して今では数ヶ国語にまで翻訳されて世界中でベストセラーを記録しているのだ。

お陰で「次はまだか」と催促される日々が続いている。

「ええ、まあ。あの本以外にも青春群像を主題とした話を書きたいと思っていまして...ただ、児童文学から入ってしまったので取り敢えず、取材に1年掛けたいと出版社のほうとも話しているんです。それで、多くの学校を取材しようと思ってはいるのですが、やはり、母校は外せないと思いまして。出来れば長期の取材の許可を頂きたいと思っています」

佐伯は人のよい笑みを浮かべた。

「そうですか。勿論、ご協力させてください。先生は我が校の誇りで希望ですからね。早速手続きを行いましょう。いえ、実は最近部外者の校内の侵入を制限しているので許可証の発行が必要なんですよ」

「ええ、そのことなら伺っております。やはり、最近は物騒ですからね」

が応えると彼も頷く。

「ええ、彼ら生徒を守るのも我々の仕事ですからね。では、事務の方に連絡しておきますので、そうですね..2時間くらいあれば出来ると思いますので寄ってみていただけますか?」

「わかりました。では、本日はお忙しい中お時間を割いてくださってありがとうございます」

は立ち上がって頭を下げる。

「ああ、そうそう。職員室のほうには先生の同級生のB6が居ますよ。時間があるようでしたら、覗いてみては如何ですか?」

理事長に言われて「そのつもりで来ました。どんな顔をして『先生』をしているのか正直興味があるので」と悪戯っぽく笑ってはそういった。

「では、先生。職員室にご案内しましょう」

上條にそういわれた、は断った。

「まだ放課後でも遅くありませんから、部活で残っている生徒さんや生徒会の子とか居ると思いますので、彼らに聞きます。あ、今日から取材の許可はいただけますか?生徒たちから話を聞くとか...」

が確認すると理事長は鷹揚に頷いた。

「ありがとうございます。では、失礼します」

廊下に出たは静かにドアを閉めた。

「...元親」

「はい、影虎様」

「一応、マークしておけ。在学中はB6とよくつるんでいたらしい。成績は良かったらしいがな」

「心得ております」









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桜風
09.7.3


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