Dear my friends F 2





理事長室を後にしては廊下を歩く。

「うわぁ...」

は思わず感嘆にも似た声を上げた。

先日、校舎の建替えがあった話を聞いていたから、多少なりとも覚悟のようなものは持っていたが、やはり寂しいものだ。

取り敢えず、このまま適当に歩いても職員室には到底たどり着けないだろう。担任だった悠里だったら、教室移動も一苦労だろうな、と何だか懐かしくて少し笑う。

これは聞いたほうが早い。

「あ、すみません」

目の前を通った生徒を呼び止めた。

制服もまったく変わったのか...

というか、あれか。この子も制服色々と手を加えちゃった派なのか...

そんなことを思いながら反応を待っていると「何でしょう?」と何だか堅苦しい声が返ってきた。

いや、雰囲気もそうだが...

「あの、職員室はどちらに向かっていけば良いでしょうか?」

先ほどの佐伯の話では彼らは職員室に居るらしい。講師なのに職員室においてもらえているのか。まあ、講師なんだから職員室の隅っこで小さくなっているに違いない。

そうは言っても、小さくなるような性格をした彼らではないが...

「職員室、ですか?ご案内しましょう」

彼はそう言ってを促した。

「ありがとうございます。何か広いから迷子になる前に在校生に聞いたほうが良いかな、って思って」

照れくさそうにはそう言った。

まあ、正直「迷子になりそうなので」って照れくさいのだが...

彼は一緒にいた生徒たちに声を掛けての案内を買った。

「ごめんなさいね、忙しかったでしょう?えーと、生徒会長さん..かしら?」

の言葉に彼は驚いた。

「ええ。生徒会長の方丈慧です。何故、僕が生徒会長だと?」

似ている、雰囲気が。

自分の代のときの生徒会長に。こう..堅苦しくて杓子定規っぽいところが。

さすがに正直にそうは言わずに

「何となく、しっかりされているので。あてずっぽうだったんですけどね。さっき、一緒にいた方たちに指示とか出されていて内容が風紀関係だったみたいなので」

と適当にごまかした。

「ああ、そうでしたか。ところで、あなたは何故職員室に?」

「私、ここの学校の卒業生なんですよ。卒業してから海外に居たので久しぶりに帰ってきたし、ちょこっと職員室を覗いてみたいな、って思って。あと、理事長からは許可いただいているのですが、取材に」

『取材』という単語には彼は少し理解できないといった雰囲気を少し醸し出したが、それでも「なるほど」と頷いた。

「しかし、理事長が変わられてから少し教員の顔ぶれも変わりましたよ」

それも、聞いている。

しかし、は「そうですか」と返してそのまま大人しく案内された。


「ここです」

そういって彼は「失礼します」と職員室のドアを開けた。

「トゲー!」

一番にの存在に気づいたのはトゲーだった。

は手を振る。

トゲーの声に反応して室内の教員たちも職員室のドアに視線を向けた。

ちゃん!」

悟郎が立ち上がってドアのところまで駆けてきた。

「どうしたの?迷わなかった??」

「方丈君に案内してもらえたから」

そう言って驚いて目を見開いている慧に視線を向ける。

「えーと、あの」

「あ、ごめんなさい。方丈君の名前だけ聞いて名乗ってなかったね。です。風門寺..先生とはクラスメイトだったんです」

の言葉に慧は益々目を見開く。

「じ、じゃあ。お前はあの悪名高きクラスXの生徒だったのか?!」

あら、いきなりタメ口だ。しかも『お前』と来た。

「落ち零れ集団の、あの、クラスXの!!」

途端に侮蔑の視線をに向けた。どうやら、彼はクラスAらしい。

ああ、何もかも懐かしいなーとは笑う。

「ああ、でもでも勘違いしないように」

悟郎がを庇うように職員室から出てきた。

ちゃんは、クラスXでありながら学年トップだったんだからね!模試だって良い成績だったし。学校ではいちばんだったんだよ」

慧は信じられないといった表情でを見た。

はにこりと微笑む。

「昔の話。今はしがない自由業だし」

そう言ったに益々不審そうな視線を向けてくる。

「おー、!」

廊下の向こうから自分を呼ぶ声がして首を巡らすと一と瞬が居た。

「来てみたよ」

そう言いながらは手を振る。

、予告もなしに来るな。しかし、迷わなかったか?」

瞬が声をかけてきた。

「うん。方丈君に案内してもらったから。でも、それゴロちゃんにも聞かれたばかりだわ」

「そりゃ、校舎の中は結構変わってるからな。言ってくれたら門まで迎えにいってやったのに」

「うん、別の用事で来たからね。それに、突然やってきて驚かせたいじゃない。それと、やっぱり皆が『先生』をやってるの見てみたいし」

は笑いながらそう言った。

「方丈君、ここまで連れてきてくれてありがとう。時間取っちゃってごめんね」

の言葉に慧はハッとなる。

「あ、いえ..では」

一応卒業生とはいえ、部外者で客人だ。ある程度の礼は必要だろうと思ったのか、彼は律儀にしっかりと頭を下げて去って行った。

「勇ちゃんみたいな子だねぇ」

の言葉に一は苦笑し、悟郎は少し面白くなさそうな表情を浮かべた。未だにあのときのに対して行ったあれやこれやは許せない。

悟郎のその表情に気づき、は笑った。









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桜風
09.7.3


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