| 職員室をとりあえず後にした。 「あ、これ。今の聖帝のパンフレット。あげるよ、参考にしてみて」 悟郎が職員室から持ってきたパンフレットを受け取り広げてみる。 「あー、やっぱり全然造りが変えられてるね」 の呟きに悟郎は苦笑した。 「うん。ボクも最初ポペラ寂しかったなー。道を覚えるのもちょっと困ったし。前の校舎のことを覚えていた分、やっぱりね」 最初は本館といえる職員室が入っている校舎からの案内になった。 施設もかなり充実しているようで、はしきりに感心している。 「やっぱりお金持ちが来ることが前提の学校はお金の使い方がアレですねぇ」 の言葉に悟郎は笑った。 「まぁねー。ボクたちのときもそれなりにお金が掛かってたと思うけど、ここまで使い込んだ感じはなかったしね」 「私立は建替えが早いよね...地球に優しくないよ」 「そうだね」と悟郎は相槌を打つ。 「でも、ちゃんとこうやって校舎の中を2人で歩くのも何だか久しぶりだ」 えへへと笑いながら悟郎が言った。 「そうだよね。そもそも2人で高校の校舎の中を歩く機会なんて卒業後に訪れるなんて思わなかったしね」 「...ねえ、手を繋いで歩いてみない?高校のときみたいに」 頑張って言ってみた。悟郎は「ゴロちゃんばんがった!」と自分を褒めている。 しかし、「え?もう大人だから。それに、ゴロちゃんここで先生してるんでしょう?」との言葉はつれなかった。 がくりと項垂れているとバタバタと廊下を駆ける音がした。 「風門寺先生!」 項垂れていた悟郎は顔を上げた。 「ああ、センセちゃん」 何だ、その呼び方は... は苦笑したが、悟郎の表情が少し変わったのに気づいて少し感心した。 一緒に居るときはやっぱりノリが高校のときと似たものとなるが、やはり彼も大人になったのだ。 悟郎を『風門寺先生』と呼んだ女性はに視線を向けた。少し、不思議そうに。 「で、何かな?そんなに息を切らせて、何か問題があった?」 悟郎が彼女に話を促す。彼女の視線の先の人物に気がついてに彼女の紹介をし、彼女にもの紹介をした。『北森真奈美』というこの人は、今年赴任したばかりの新米教師だとか。 は会釈をして挨拶に代えた。急いでいるようだし。 彼女も頭を下げてそれに返す。 「で?」と悟郎がまた促す。 「あ!そうだった。嶺君と多智花君を見ませんでしたか?」 「んー?ミネミネとタッチー?取り敢えず、現時点では見かけてないけど。たしかセンセちゃん、今日はその2人の補習だよね?」 「...逃げられました」 彼女の言葉に「ああ」と溜息に似た相槌を打った悟郎はに向き直った。 「ごめん、ちゃん。ちょっとボク、センセちゃん手伝って探してみるから、ここ動かないでよ?ゴロちゃんはミネミネ探すからセンセちゃんはタッチー探して。たぶん2手に別れて逃げてるはずだし」 「頑張って〜」とは手を振った。 悟郎も苦笑してそれを返してから遠ざかっていく。 「ああ...!」 悟郎が帰ってくるのを待ちながらパンフレットに視線を落としていると不意にそんな声を傍で上げられたは驚いて視線をそちらに向ける。 背が高い... 足が、手が長い... どこの国の人だ?? 瑞希も背が高いし、翼だって手足が長い。 でも、そういうレベルを超えて背も高ければ手足も長い。 彼はじっとを見ていた。 知り合い..じゃない。この人は知らない人だ。 「こ、こんにちは」 挨拶をしてみた。不信感を全く隠さずに挨拶をしてみると彼の背後から薔薇の花びらがシャワーのように降り注いできた。 あ、何かどこかの誰かを彷彿としてしまう。あっちはカサブランカのむせ返るような香りだったが、こちらは薔薇の..でも、そんなにきつい香りではない種のものなのだろうが。 「やあ、俺のヴィーナスちゃん」 そう言って彼はの手を取って手の甲にキスをした。 ピシリと何か音がしたような気がしたが、彼はそう気にせずにに向かって妙ちきりんな賛辞を口にし始める。 は徐に手に持っていた聖帝のパンフレットをくるくると丸め始めた。 そしてそれをゆっくり振り上げて...勢い良く振り下ろした。 「まァーーーーって!!」 間一髪でを羽交い絞めにして止めたのは意外にも校舎内であれやこれやをしていた清春だった。 「おい、こら。、何してンだよ!!」 「こいつ、あの男と同じ属性だ!!」 尚も丸めたパンフレットを振り下ろそうとするを羽交い絞めしたまま彼から距離を置く。 彼は目を丸くしていたが、「勇ましい姿もステキだね、ヴィーナスちゃん」と言って投げキッスをしてくる。 「オメェもちょっと黙れ!、何でここに居るンだよ!他の奴らは?ナギとかと一緒じゃねェのかよ!!」 「さっきまでゴロちゃんと一緒だったよ。でも、北森先生が嶺君と多智花君って子に逃げられたからミネミネ君を探しに行ったの。ここで待ってるように言われたから待ってたら、これが来た!」 そう言って丸めたパンフレットで目の前の男子生徒をびしっと指した。 「、動くなよ」 そう言って清春は素早く動いて目の前の男子生徒を捕獲した。 さすがに予想できなかった清春の行動にはきょとんとした。 「悟郎の携帯に連絡入れろ。こいつが、嶺アラタだ」 「ちょちょちょ、ODZUN!男に抱きつれても全然嬉しくないよ!」 清春とアラタの身長にはかなりの差がある。彼を捕獲するために、少し強引に清春がくっついている状況だ。 どうやら今は仕掛けの帰りだからか道具等々はないらしい。 はニィと笑っていそいそと悟郎に連絡を取り始めた。 「オイ、嶺」 「...何デスか、仙道先生」 諦めたように嶺は溜息混じりに返事をする。 「悟郎や、あの新米教師ちゃんには別にどう言っても良いけど、にはさっきのようなことを言うなよ」 「...ああ、カノジョ。仙道先生の彼女ですか、そりゃ失敬」 「全っ然違う!けど、これはお前のための忠告だ。オレッ様がこんなに親切なことを言うのはかなり珍しいんだからな、肝に銘じておけよ。でないと、ジャンピングニーをお見舞いされンぞ」 パチンと携帯を閉じたが嬉しそうな顔で振り返る。 「ゴロちゃん、ダッシュで戻ってきてくれるって。ハルそれまでそのままでヨロシク」 「あー!メンドくせェ!」 清春が叫び、アラタは不思議そうにを見ていた。 |
桜風
09.7.10
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