| が日本に帰ると連絡をしたときに衣笠から聞いた。あの学園はが卒業した当時の学園とは別のものになっている、と。 自分が唯一『母校』と認める場所を踏みにじろうとしている者が居るのだ。 ―――取り戻す。 聞いた瞬間、はそう決意した。 そして、同じことを思った彼らも1年だけだが講師としてあの学園に乗り込むこととなったとも聞いた。 全くの偶然。 だが、これが最初で最後のチャンスだろう。 それはさておき。 取り敢えず、突然の帰国で彼らを驚かせようと思って帰ったのに、衣笠のお陰でそれは叶わぬこととなった。 日本に帰ってきた日、は空港で彼らに出迎えられたのだ。 彼らは容姿はだいぶ変わっていた。 だが、やはり彼らの空気は全く変わっていなかった。 翌日も仕事があるというのに、の帰国を祝ってパーティを開いてくれた。 と、言ってものためとかじゃなくて自分たちがしたかっただけなのかもしれないが... 「ちゃん。ボクたち、今聖帝に講師として赴任しているんだ。1年だけなんだけどね」 悟郎が少し影のある笑みを浮かべていた。 「衣笠先生から聞いた」 悟郎の言葉の先を読んでは言う。 その目は、もう決心している。 「状況は?」 「んー、難しいなぁ」 一が呟く。 瑞希を見たら、彼も頷いた。 ピリリリと誰かの携帯がなった。 「申し訳ございません、翼様」 どうやら永田の携帯で、急用が入ったようだ。 「さん、せっかく久しぶりにお会いすることが出来たのに、申し訳ありません。お先に失礼させていただきます」 「いいえ、今度ゆっくりお話したいですね」 はそう応えて永田を見送った。 そして、先ほどの話の続きをはじめる。 一応、清春と翼にこの会場が盗聴されていないか確認した。2人は大丈夫だろうと請け負う。 「まあ、じゃあ。内側からは皆が崩して。外堀はわたしが埋める」 の言葉に彼らは一様に驚いた。 「どうやって?!」 「どこかの馬鹿たちのお陰で人脈は広いよ」 両親が大学で教鞭をとっていた関係もあって、その教え子と言う人物を当たれば結構範囲は広がる。さらに、には考えがあった。 それに、自分自身も色々とやっているから人脈的には彼らと並ぶと思う。 「取り敢えず、永田も動いてはいるんだが...」 翼が言った。 「...永田さん、か」 「どうした、」 「わたし、今度聖帝に遊びに行こうとは思うのよ。卒業生が母校を訪ねていくのってない話じゃないと思うし。この目で校舎とか見て回りたいし」 の言葉に皆は頷く。 「で、その後も何回か定期的に聖帝には行きたいのよね」 「来れば良いだろう?ああ、いや。最近は部外者が校内に入るのが厳しくなっているな」 「そうなんだ?そうだな..聖帝に行きつつも、わたしがみんなのしていることに関係していないというのを装いたいと思います」 まあ、ノーマークな方が動きやすい。 彼は頷いた。 「けど、聖帝にしょっちゅう顔出してたら、さすがにマークされると思うぜ?オレらのクラスメイトってのは調べればすぐ分かるだろうし」 一の言葉には頷く。 「だから、皆と..というか翼と微妙に気まずい関係をでっち上げたいと思います」 「What?!俺とか?」 「講師の件の言いだしっぺ、どうせ翼でしょう?」 の指摘に翼は頷く。彼らを殆ど強引に招集し、講師として赴任することにしたは彼だ。もちろん、細かい事務や調整などは永田が担ったのだが... しかし、元々B6の中では翼はとは仲良しこよしではない。そこそこの距離を保った友人だ。 べったりな瑞希や悟郎、幼馴染で世話焼きの一ほどと親密ではない。 だからこれ以上気まずい関係と言うのは難しいのではないかと思った。だって、友人と言う関係を解消するのはそれはそれで不自然すぎる。 「ここに居ない人の名前を出すのはちょっと気が引けるけど、永田さん」 の言葉に彼らは益々首を傾げる。 「わたしが永田さんと付き合っていて、永田さんと別れたことにすればいいと思うの。彼の了解が必要だけど」 の言葉に周囲の時間が止まった。 何より、数名魂が抜けている。懐かしいことにボタボタと爬虫類が落ちてくる。 翼は咳払いをひとつして、少し言いにくそうに切り出した。 「あー...は永田と付き合っていたのか?」 「人の話を聞いてた?物凄くあからさまに『仮定』で話してたでしょ?」 のこの一言でどこかに行っていた数名の魂が帰還する。 「別れ話をするとか何とかで一度だけ彼と入念に打ち合わせをするの。永田さんは超有能な秘書だし、何を調べるべきかってのはもう決まってる。だから、外堀を埋める仕事をするわたしと永田さんの打ち合わせはその1回。その後は気まずげに距離を保つ。お互いに不測の事態が起こったり、情報共有しておいたほうが良い時は翼経由でもいいから聞けば良いし」 そう言っては皆に視線を向けた。 しかし、あれだ。 アレだけ恋愛を毛嫌いしていた、むしろ恐怖症と言って良いくらい距離を置いていたがこんなことを言い出すなんて... 彼らの目は考えていたことを物語る。 は苦笑した。 「ほら、5年間一生懸命恋愛については勉強したよ」 その言葉にどきりとした人物はごくりと固唾を飲む。 「か、彼氏が出来たとか?」 悟郎が恐々と聞く。 「ううん。恋愛小説、映画、漫画。読み漁ったよ!見まくったよ!!言語、宗教問わずにね。BでLなものも読んでみたんだから!」 胸を張っていうに呆れたように翼が溜息を吐いた。 「...結局分からんままか」 「良いじゃない。全く知識をつけていなかった過去に比べれば大進歩だよ」 そう言いながらもちらりと一に視線を向ける。 目が合った彼は困ったように笑った。 5年前、自分は彼女に気持ちを告白した。彼女なりに一生懸命頑張っているところなのだろう。 今回のは、まあ一種の非常事態だし。そんなに申し訳なさそうに眉を八の字にしなくてもいいのに... 「ま、そうだな。永田には話しておく。どうせ引越しの荷解きもあるんだろう?ついでに手伝わせたら良い」 「助かる」 肩を竦めてはそう返した。 「そういや、家はどこだ?」 一が聞くと聖帝から少し遠いところだと分かった。 「俺たちの母校、取り戻すぞ」 翼の言葉に皆は「おう!」と声を上げた。 |
桜風
09.7.17
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