| 北海道から戻り、お土産を持って瑞希の家に向かった。 「じゃあ、クマのことも含めてこっちで色々当たってみるわ」 別れ際に母がそう言ってくれた。動物のことなら本気で信頼できる。 「こんにちは」 前以て訪問を知らせておいたので葉月は歓迎してくれた。 「これ、北海道のお土産です」 「わー、ロイズのチョコじゃない!ありがとう。あ、瑞希はまだ学校ね。でも、正直驚いたわ。ああ、どうぞあがって」 苦笑しながら葉月がいう。 「瑞希の講師の話?」 「そう!あの子も頑張ってるのね」 彼が講師として聖帝に入った本当の理由を葉月は知らないらしい。 「ですよねー。いい傾向じゃないですか」 はそのまま知らないフリをして話をあわせた。 しかし、この部屋は広く感じるな... 「旦那さんは?」 「仕事。って言っても単身赴任。ま、お陰で気楽なものよ」 笑いながら葉月が言う。 瑞希が自分の才能を発揮するようになり、どうやら葉月は肩の荷が下りたようでさくっと結婚した。 も式には呼ばれたが、それにはいけなかった。まだ入院生活中の話だったのだ。 お祝いしたかったのに、と思った。 葉月なら幸せになれるだろうし、なってほしいと思っている。 「そういえば、星太くんは?」 「今年大学生。こっちには8月頃に遊びに来るって言ってた。大学は..一応向こうにしたみたい」 「あ、そうなの?」 「まあ、折角だしね」 の言葉に「そうだよねー」と葉月が相槌を打つ。 「そういえば、葉月お姉ちゃん。仕事は?」 「今日は遅番。夕飯作ってくから瑞希と一緒に食べて」 「あ、じゃあ作るところからしようか?」 の言葉に葉月は少し悩んだが、「せっかくだからお姉ちゃんの手料理、久しぶりに食べちゃいなさいよ」と言ってエプロンをかける。 「そういえば、ちゃん知ってる?聖帝にGEのヤクモが居るんだって」 何だ、それは...? 「何、その『GE』って」 が聞き返すと驚いたように葉月が振り返る。 「知らないの!?」 「...うん。何かのグループ?」 「アイドル、アイドル!えー、GE知らない子がこの日本に存在するんだ...」 感心したようながっかりしたような口調で葉月が言う。 そんなことを言われても... は肩を竦めた。 「じゃあねー、行って来ます!」 ビシッと何故か敬礼して言う葉月に笑いながらも返礼した。 暫く人の家で一人きりか。何だか落ち着かないな、と思いながらソファに凭れて葉月が渡してきたアイドル雑誌に目を通していた。 何かの気配を感じたはそっと目を開けた。 「おはよう」 近すぎて分かりにくかったが、その声の主の存在に驚いて思わず仰け反った。 「み、瑞希!?あれ、何で?どうした??」 「ここ、僕の家。僕がいても、おかしくないよ?」 から顔を離してにっこりと微笑みながら瑞希が言う。 「あ、うん。正しくは葉月お姉ちゃんの家ね?あれ、寝てた?」 「うん、気持ちよさそうに寝てた。可愛かった」 「そっか」と言ってポリポリと頭をかく。いや、ホントびっくりした。 「いつ帰ってきたの?」と言いながら時計を見ると既に20時だ。 「あ、あれ...」 「2時間くらい......前」 「早く起こしてよーーーー!」 が困ったようにそう訴えた。瑞希は笑みを浮かべたまま「でも、気持ちよさそうに寝てた」と言うだけだ。 抗議しても無駄だと悟ったは立ち上がりキッチンに向かう。 「食べた?」 「ううん。と一緒に食べたいから、我慢した。もう少しで我慢できなくて食べそうになったけど......頑張って我慢した。でも、ちょっと我慢できなかったけど」 「何だ、そうなら先に食べちゃえば良かったのに」 は言いながらコンロの火をつける。 「...そういう意味じゃないんだけどな」 ポツリと呟く瑞希の声はには届いていなかった。 「体のほうは、大丈夫?」 は気恥ずかしげに俯く。皆心配してくれる。これは幸せなこと。 「うん。ゴロちゃんにも聞かれた。年に2回はおばあちゃんの顔を見に行かないといけないけど、日本に帰国を許される程度には回復しているよ。まあ、こっちのお医者にも定期的に通うように厳命されているけど。おばあちゃんの弟子がこっちにいるんだよ」 の言葉に瑞希は優しく目を細めた。「よかった」と自然に言葉が漏れた。 |
桜風
09.7.24
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