Dear my friends F 13





瑞希の家を後にした。

送ってくれると言ったが、彼は明日も学校だし、自分の家は少し遠いしと断った。

心配そうにしていたが、「大丈夫」と笑いながら言うと諦めたように溜息を吐き、「何かあったら僕に電話してね」と言って見送ってくれた。


とぼとぼと駅へと向かう。

何だって自分はこうも他人の好意に無神経なんだろう...

自分で自分がイヤになる。

また泣けてきた。情けない。

?」

不意に呼ばれて振り返ると瞬がたっていた。

「あ、瞬...」

ごしごしと目元をこする。

その仕草で彼女が泣いていたことに気づいた瞬は少し足早に近づいてきた。

「どうした、何があった?」

「ううん、なんでもない。自分の無神経さに愛想が尽きただけ」

の返答に瞬は溜息を吐き、「付き合ってやるぞ」と言ってくれた。

お店に入っても瞬に迷惑を掛けるかもしれないのでは断ったが、「じゃあ、あそこなら良いだろう」と言って瞬はの手を引いて歩き出す。

途中、はコンビニの外で待たせて飲み物を購入した。自分が声を掛けるまで泣いていたのだから、きっと明るいコンビニに入ったら凄い顔になっているのがよく目立つだろう。

瞬の心遣いに感謝しつつ、彼について歩いていくと公園に出た。

あ、と昔を思い出す。

「ここなら、大丈夫だろう」

そう言って瞬は外灯の下にあるベンチに腰を下ろす。

「夜遅いから不良さんたちが来るかも」

「...そうなったら、全力で逃げれば良いだろう」

瞬の言葉には笑い「それもそうか」と呟き、瞬の隣に腰を降ろした。


「で、何があった?」

「...『好き』って言われた」

の言葉に瞬は目を丸くする。

そして、今日はが姉の家にやってくるといってウキウキしていた親友の姿を思い出した。

「なるほど...斑目か」

は驚いて瞬を見上げた。

「今日、斑目が異様に浮かれていたからな。がお姉さんの家にやってくるから一緒にご飯を食べるって」

ああ、なるほどと納得した。もしかして、自分の知らないうちにエスパーになったのかと思った。

「斑目は、やっと言ったのか...」

「『やっと』って?!」

は驚いたように声を上げる。

瞬はこれ見よがしに深い溜息を吐いた。

「あのな、見え見えだったんだぞ」

「初耳!」

「この俺でさえ、気が付いていたんだからな」

一がのことを好きと言うのも在学中に既に気が付いていた。一番意外だったのは、悟郎だ。

あの外見だったのと、人懐っこさがあったので彼の場合はその『好き』だとは思わなかったが、悟郎の宣言を聞いたときには、少しは「やはりな」という気持ちもあった。

「それで、自己嫌悪か」

その見え見えだった気持ちに気づかずに暢気に仲良くしていたから、という理屈なのだろう。

「何で、気づけないんだろうね」

は両親のことで、その..『愛』とか『恋』とか信じていなかったからだろう?」

「...話したっけ?」

「衣笠先生から聞いたことがある。まあ、それなら気づけなくても仕方ないだろう。そういう感情を自分に向けられても受け入れられなかっただろうしな。しかし、斑目もそのことは知っていたはずだが...」

最後のほうは独り言のように呟く瞬に「皆、知ってるの?」とは問う。

「ん?ああ、まあ。最低でもB6全員知っているぞ。卒業式の日に聞いたからな。の体の事情を聞いたときだ」

じゃあ、一もそれを承知で告げてくれたのか...

「...俺が聞いていいのか分からんが。はどう言ったんだ?」

「前に、ゆっくりで良いって言ってくれた人が居るから『好き』については目下模索中。たどり着けるかどうかわかんないけど、って」

自嘲気味に「卑怯だよね」と付け加えるに溜息を吐いた。

「別に、卑怯でもなんでもないだろう。斑目がそう言ったのか?」

瞬の言葉には首を横に振る。

「だろうな。まあ、出来るだけ早く答えを出してほしいとは思うだろうが、卑怯だとは思っていないだろう。がそうなった経緯が経緯だし。斑目は比較的身近にその様子を見ていたんだろう?」

コクリとは頷いた。

「じゃあ、それをひっくるめてのことを..その...好き、なんだろうから、ちゃんと待つさ。それくらい、覚悟してるだろう」

「...がんばる」

「俺は、当事者じゃないから言えるんだろうが...無理をするな。忙しいんだろう?執筆意外にも『取材』で回っているから特に今年度は」

そう言ってポンとの頭に手を置く。

「何か、瞬には愚痴を聞いてもらってばかりだよね」

ポツリと呟くに瞬は首を傾げた。

「ほら、昔。高校のとき一と大喧嘩したときもこの公園で話を聞いてもらったでしょ?」

「...そういえば、そうだな」

苦笑して頷く瞬に対して、は視線を逸らした。

「何か、思い出すと本当に青臭くて恥ずかしいよね。何であんなに意固地になっていたんだろうって思うよ」

そう言って盛大な溜息を吐いた。

隣で聞いていた瞬は思わず噴出す。

「笑わないでよ!」

「悪い。だが、そうだな。きっとそれを恥ずかしいって思えるのはが成長した証拠じゃないのか?色んなものを見て、聞いて、感じて...俺も、たまに昔の自分が恥ずかしくなる。成長するってのはきっとそういうことなんだろうな、って思うぞ」

「...さっすが、世界のヴィスコンティーのリーダー。達観してますねぇ」

「茶化すな」

ブスッとして瞬が返す。

「これ、奢ってもらえるの?」

手渡されてまだキャップを開けていないペットボトルを小さく振っては聞いた。

「ああ、奢りだ。俺もおかげさまで少し貯蓄をする余裕が出てきたからな」

「ありがとう」

キャップを開けて一口飲む。

「そっか...意外なことに成長してたんだ、わたし」

「時間ってのは常に流れてて、前に進もうとしてたらきっと成長することは出来るんじゃないか。スピードは人それぞれだと思うし、中々成長できない部分ってのはあるかもしれないけどな」

「焦らず弛まず余所見せず、かな?」

「余所見は、少しくらいした方が良いだろう。成長は歩く速度が一番良いって何かで読んだ気がするぞ」

「走るより、歩くほうが確かに疲れないし良いかも」

「...駅まで送ろう。夜も遅いしな」

そう言って瞬はベンチから立ち上がる。

も続いて立ち上がった。

「パパラッチにリークされたらどうする?『深夜の密会!ヴィスコンティーリーダー熱愛!?』みたいに」

が笑いながら言うと

「笑い事じゃ済まないだろう。俺が、斑目に嫌がらせを受けるし、仙道が調子に乗る。冗談でも言うな」

と瞬が不機嫌に返す。

その表情が心底迷惑そうだったので、は楽しくなって笑った。









Next


桜風
09.7.31


ブラウザを閉じてお戻りください