Dear my friends F 15





「おう、じゃねェかよ」

職員室に入ってきたを見つけた清春が声を掛けてくる。

「久しぶり...かな?」

つい先日も会ったが、と思いながらもが言うと「そう久しぶりでもないだろう?」と別の声が聞こえて振り返る。

「よっす!」

「よっす」と返してバッグから箱を取り出した。

「これ、職員室の皆さんでどうぞ」

「お?!北海道か。おばちゃんとこ、行って来たのか?」

ガサガサと包みを乱暴に剥ぎながら一が聞く。

「うん、行ってきた。色んな動物ポイントを案内してもらったよ」

「うわぁ...いいなー、いいなー」

「一の所属しているリーグのシーズンオフに連絡して連れて行ってもらえば良いよ。って、ちょっと待って」

羨ましがりながらもお菓子に手を伸ばす一の手からは箱をするりと取り上げる。

「あ!何するんだよ」

「一が抱えてたらお菓子が全部なくなっちゃうでしょう?北森先生」

振り返ると最近知り合った新米教師がこちらを見ていた。

「はい!」と元気よく返事をして立ち上がる。

「ごめんなさい、これ皆さんの机の上に配ってもらえる?さすがの一も人の机の上のものまで取らないだろうから」

と言いながら一から取り上げた菓子箱を渡した。

「ええ〜!なんだよー」と抗議の声を上げる一は無視しているに真奈美はクスリと笑う。

「なに?」

「仲が良いんですね」

そう言われては一を見上げ、一もを見下ろす。

「僕の方が、仲が良い...」

そう言って瑞希がに圧し掛かる。

何の心構えもなかったため、そのかけられた体重に思わずがよろめくと一が慌てて手を伸ばして腕を掴んだ。

「こーら、瑞希。お前デカイんだから、ちょっと手加減しねぇとなんて簡単に潰れるぞ」

そんな一の注意に瑞希はムッと膨れてツンと顔を背ける。

「はいはい、2人とも喧嘩しない。子供じゃないんだから」

呆れながら悟郎が間に立ち、2人の喧嘩を止める。

喧嘩、と言うほどでもないが、少し雰囲気は悪くなった。

「そういえば、ちゃんは何で今の時間学校に居るの?まだ午後も授業あるんだよ?」

「うん、知ってるよ。今日は授業も見せていただこうと思って取材の申し込みしていたの」

なるほど、と皆が納得していると

「そういえば、」と少し離れたところに居た翼が何かを思い出したように近づいてきた。

永田は翼の席の傍に立ったまま近づかない。

「なに?」

がこの学校の卒業生だということが最近噂に上っているが、良いのか?」

彼女は自分の正体は隠したいといっている。だから、こういう噂は良くないのではないかと思ってくれたらしい。

「ああ、ペンネームのほうでしょ?そっちなら取材の許可を頂く代わりに学校の宣伝にしても良いって話にしているから大丈夫」

つまり、学園側は、芸能では翼・瞬・悟郎、スポーツでは一と清春、そして学問的には理系が瑞希で文系がといった風に宣伝効果のある人物を前に押し出すことが出来ているのだ。


「それで、どの授業なんだ?」

早速机の上に配られたお土産を食した瞬が聞いてきた。

「ああ、みんなの授業も思い切り聴講したかったけど、3年のクラスAの宗教だって。他の学校にはあまりない科目だと思うし、面白そうだからお願いしますって言っちゃった」

笑っていうに何故か皆は胸を撫で下ろす。

「こら、『先生』」

その雰囲気を感じ取ったは皆を見渡して軽く窘めた。

「んだってよ〜。やっぱり見られると恥ずかしいだろ?」

「そうそう。高校のときのボクたちを知ってる人が見たら何だか、色々と思うところがあるんじゃないかなーって」

自覚ありか...

しかし、悟郎の言葉では今日態々持ってきたものを思い出した。

「そうそう、北森先生」

に呼ばれて少し遠慮しながら真奈美がやってきた。

「はい。あ、これひとつ余りましたよ」

そう言って残った菓子を渡してくる。

「あ、それは余りじゃないです」

そう言って個包装してある袋を破って中身を取り出した。

「トゲー、食べるでしょう?」

なるべく保存料の使っていない菓子を選んだのもこのためだ。

「とっげ〜!」

トゲーは喜んでの手に飛び移り、菓子を食べ始める。

「ありがとう、

瑞希の言葉には笑顔で頷き、そのまま空いた手でバッグの中を漁ってディスクを取り出した。

「これ、差し上げます」

「...何ですか?」

ディスクを受け取った真奈美は首を傾げながら中身を聞く。

「昔、わたしが高校時代に補習を見ていたときに作ったプリントのデータです。教育実施要領とか変わってたら使えないかもしれないけど、良かったら参考にして。北森先生は補習を見てるって聞いたし」

「おっまえ!まだ持ってたのかよ」

皆は口々に驚いたように言葉を漏らす。

「まあ、物持ちはいい方だし」と笑いながらいうに皆は溜息を吐いた。

「ありがとうございます!」

真奈美は勢いよく頭を下げて早速自分の机に戻り、ディスクを開いていた。

「あ〜あ。ボクたち、一応隠してたんだけどなー」

悟郎が恨めしそうに言うが、

「いいじゃない。経験者の言葉の方が重いんだし。A4だっけ?見てたら懐かしんじゃないの?」

悟郎の顔を覗きこみながらが笑って言うと「まいったなー」と悟郎は呟き、視線を逸らす。

悟郎が『参った』のはの言葉ではなく、その表情だ。相変わらす可愛いというか、今でも綺麗だとも思う。これは、惚れた人間から見た欲目ではないと確信している。

あの時のリベンジが出来ないまま悶々と約5年過ごしてきた。

自分らしくない、とも思ったがそれでも何だかあの挫かれ方は軽いトラウマだ。

一と瑞希は結局どうなのだろうか...

彼らが今でもに好意を抱いているのは瞳を見たらわかる。

他の誰を見る瞳よりも優しい。

「ボクも、そうなのかな?」

「ゴロちゃん?」

思わず呟いてしまったらしい言葉にが気づき、声を掛ける。

「ううん、何でもない。なんでもないんだよ!」

慌てて返す悟郎に首をかしげながらもは「そう?」と納得した。

ああ、ボクって意外と意気地なし...

悟郎は自己嫌悪に陥りながらトボトボと自分の机に戻っていった。









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桜風
09.7.31


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