Dear my friends F 16





クラスAで聴講した宗教学の授業は面白かった。

自書の本の資料本として何冊も宗教学に関するものは読んだが、それでも天童の授業は自分の見ていた別の方面からのアプローチだったので興味深く聞くことが出来た。

ただ、方丈慧が少し落ち着かなかったのが残念だな、と。

しかし、教師たち曰く、彼はこの学園で最も優秀な生徒らしい。だから、その生徒がアレだけ落ち着かなくなるのなら、やはり他の生徒には内緒にしていて良かったということなのだろうと取り敢えず納得することにした。


クラスAでの聴講を終えて職員室へと向かう。

「どうでしたか、私の授業は」

天童も職員室に戻るからと一緒に向かうことにした。

「とても興味深かったですね。これは、どのクラスでも行っている授業なんですか?」

「ええ、この学園はミッション系の学園ですからね。他宗教のことも学んでいくのも必要ですし」

まあ、今の日本でどれだけ『ミッション系』というのに拘っている人間がいるかは不明だけどなー...と思いながら「なるほど」とは返す。

...しかし、まあ。

言葉を交わすたびにジャケットプレイされても...

何か、あれだ。鳥が求愛するときに派手に翼を広げたりするあの動きに似ている。

後で一にも言ってみよう。彼なら何となく同意してくれそうな気がする。

「しかし、5年かぁ...」

チクリと胸が痛くなった。

「どうかしましたか?」

「いいえ、何でもないですよ」

の隣で朗々と宗教学について語っている天童だったが、隣を歩く彼女の様子を注意深く観察していた。

先ほど理事長室に残ったときに理事長から言われていたのだ。

彼女は、他の学校がよこしたスパイかもしれない、と。

学校の看板になりうる優秀な生徒を引き抜いていくかもしれないので、注意しておくように。

『教育者』としてではなく『経営者』として、『一人の人間』としてではなく『客寄せパンダ』としてこの学校の優秀な生徒を狙っている可能性があると危惧していると理事長は相談してきた。

そんなことは許せない。

天童はその尻尾を掴んでやるとひっそりと心の中で決めていた。


「おー、。次は誰の授業だ?」

職員室に戻ると一が声を掛けてきた。

「今日はもうおしまい。天童先生の授業面白かったよ」

勉強はもう嫌いではないが、苦手なのは相変わらずでその勉強を『面白い』というは一にとっては宇宙人だったりする。

「じゃあ、帰るのか?」

「まあ、行くところはあるけど」

「んじゃ、送ってやるよ。車で来てるから」

一がそう言ってポケットから車のキーを出す。

「ホント!?助かる。ここからだと乗り継ぎ何回もしなきゃいけない面倒なところなのよ」

そんな会話をしていたが、「私がお送りしましょう」と天童が申し出た。

一もも驚く。

「えーと、『天童先生』だったよな?が、を?」

「ちょと、人の名前一々確認しないの!」

がたしなめると「いや、まだちょっと自信がなくてなー」と一は相変わらずのことを言うため、「すみません、天童先生」とが謝る。

「いえ。それで、どうでしょうか。草薙先生は放課後サッカー部を見てくださるという話になっていますし。もし、場所が遠ければ帰ってくるのに時間のロスがあるでしょうし、渋滞にはまると放課後までに戻れない可能性がありますよ」

「サッカー部、見てるんだ?」

少し嬉しそうに言うと「まあなー」と照れくさそうにそっぽを向いて一が肯定する。

「じゃあ、折角のコーチを生徒さんたちから取っちゃうわけには行かないので、天童先生、よろしいですか?」

が言うと一と天童が少なからず驚いたような表情を浮かべた。

まあ、としては天童が「送る」と言い出した理由が何となく分かっているので、警戒させるのも得策ではないし、と思ってお願いすることにした。

「ええ、結構ですよ。では、参りましょう」

「じゃあねー、皆にヨロシク」

手を軽く振っては職員室を後にした。


「警戒、されてんのか...?」

「左様でございましょうね」

「うわぁ!!」

背後から同意の声を聞いて一は驚いた。相変わらず神出鬼没な永田だ。

「これは、驚かせてしまいましたか。申し訳ありません」

全く申し訳なさそうなのも相変わらずだ...

「大丈夫かな、

「大丈夫でしょう。ここで改めてさんを敵に回すほど理事長は愚かではないでしょうし、天童先生が彼の命を受けているのなら尚更ですね。取り込もうとするでしょうけど、逆に取り込まれるかもしれませんね。さんは魅力的な方ですから」

何故か永田が口にした「魅力的」という言葉にドキッとした。

それを振り払うように1回深呼吸をする。

「けど言うこと聞かなかったら...って迫られないか?」

「それは、我々が人質になるということですか?草薙さんは、さんの弱点となられるおつもりですか?」

ゴクリと唾を飲む。何だか今の永田はとても迫力がある。少し、怒っているのか?

「いいや。オレたちB6は最強だぜ。何かあっても、絶対に切り抜けられる」

「ええ、そうですね。それに、こちら側には私とトゲー様もおります。簡単に敵に回すには少々骨が折れると判断できない程度なら、逆に少し困ってしまうのですがね...」

悩ましげにそう言った。

確かに、特に永田は敵に回したら厄介だろうなー...

馬鹿なことしてるよなー、と一は理事長にそっと同情した。

本人も言っていたが、B6に加えて永田とのタッグを相手にしているのだ。時代が悪かったとしか言いようがないと思う。

一応『敵』である理事長にちょっぴり同情しながら一はそっと溜息を吐いた。









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桜風
09.8.7


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