Dear my friends F 17





「それで、どちらに向かわれるのですか?」

外国製の高級車に乗せられては肩を竦める。

あ、そういえば。鳳も車が趣味で高そうな外車を乗っていたな、と思い出す。一度病院に連れて行ってくれた。

「ああ、出版社です。打ち合わせがあるので」

何だ、と天童は少しがっかりしたような雰囲気を漂わせた。

しかし、気を取り直す。出版社の住所を聞けば、彼女の言うとおり少し遠い場所なので話を聞き出すには丁度良い。

「そういえば、先生は」

「ああ、本名のほうでお願いします。学校でも。もう2人のGTRの方にもそのようにお伝えくださいますか?」

が天童の話を遮ってそう言った。

「何故でしょう?お聞きしてもよろしいでしょうか?」

「今日の授業。方丈慧君をどう思いましたか?」

の言葉に天童は納得した。注意するほどでもないが、少しそわそわしていた。

彼が彼女の大ファンだという話は理事長室で聞いていたため、その理由も何となく推測できた。

「了解しました」

つまりは、学校側に迷惑を掛けるから、とのことだろう。

ふむ、意外だ...

「それで、ごめんなさい。少し話の腰を折ってしまいましたね」

が先ほどの話を促す。

何か、ちょっと拍子抜けと言うか...

先ほどよりも少し警戒心を緩めた天童は先ほど聞こうと思っていたことを言う。

さん、でよろしいですかね?さんは、色んな学校に取材に言っていると聞きましたけど、他にはどこに行かれているんですか?差し支えなければ、教えていただきたいのですが...」

「そうですね」

そういってが今のところ取材を申し込んだり、取材をし終わった学校の名前を挙げていく。

「公立学校も、ですか?」

「公立高校に通う人も少なくないですから。普通科や夜間学校の取材も行ってます。女子校、男子校。分校色々ですよ」

「そうですか。しかし、何故今、青春群像を主題とした話を書きたいって思われたんですか?今発行されているシリーズの児童文学の売れ行きは好調と聞きますよ」

天童の言葉には苦笑した。

「ええ、まあ。おかげさまで売れているみたいですね。ただ、あれはファンタジーなんです」

「ええ、私も楽しく拝読しています。宗教学の教師としても中々興味深い記述があったりして、児童文学といえど楽しめます」

「ありがとうございます。まあ、結局今考えているのはファンタジーの域に入るかもしれないのですが、少し身近なテーマで書いてみたいな、と。大人になった人には少し懐かしい、大人になる途中の人たちには憧れと言うか夢を持てるようなそういうもの。それで、思ったのが『ジュブナイル』と呼ばれるジャンルだな、って。誰もが経験したことのある、けれども少し夢を加えたような大雑把に言えば『青春もの』ってやつですかね。それに挑戦してみたいんです」

ちょっと青臭いですかね、と言って小さく笑う。

「...さんの青春は、とお聞きしても?」

「答えても良いですけど、天童先生の青春も代わりに教えていただけますか?」

少し茶目っ気のある笑顔を向けてそう言うに苦笑した。敵意が本当にない人だ。

「いいですよ。だから、さんの青春はどうでした?」

「...ドタバタでした。あのB6と1年一緒だったんですよね。今でもきっと職員室で五月蝿く騒いでいるんじゃないんですかね?」

そう言って笑う。

彼女はそのまま彼女の青春を語る。それは、ありきたりの、ただ、ちょっと友人が騒がしい普通の青春だ。

「はい、次は天童先生」

語り終わったが言うと天童は笑顔を浮かべる。

「残念ですが」と言って車を止めた。の用事がある出版社の前だ。

「あ...」

「また今度機会があれば、お話しましょう」

「タイミング、わかってて促しましたね?」

車に乗って移動することのないは後どれくらいで目的地に着くか分からなかった。対して車の運転に慣れている天童は距離と時間の予測等には慣れている。

あとどれくらいで着くかがわかって、彼女に聞いてみたのだ。

何かあっても自分が話さなくて良いように。

「ふふふ」と笑う天童に肩を竦めては車を降りる。

「態々送ってくださってありがとうございました」

窓越しに声を掛けると「いえ、帰りはお気をつけて」と愛想よく返される。

が出版社のビルに入っていくまで見届けて天童はアクセルを踏んだ。


「少し、警戒しすぎなのではないだろうか...」

自分に敵意を見せず、自分の手の内とも言える取材先の他校の名前まで言った。勿論、それが本当かどうか分からないし、調べてみるつもりではあるが、調べればボロが出るようなことを態々口にすることはまずないだろう。

取り敢えず、元親に報告しておこう...

先ほど通った道を戻りながら天童はそんなことを考えていた。









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桜風
09.8.7


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