Dear my friends F 22





コンコンとドアをノックした。

返事がないが、「しつれいします」と声を掛けては中を覗く。

すると、蛇に囲まれて固まった慧を救出しようと生徒会が奮闘している最中だった。

「あ、ちょっと邪魔。今、慧が大変なんだから」

那智が冷たくそう言う。

「方丈慧君。その子たち、毒がないから自分で歩いておいで。あと、窓開けよう。でないとこの蛇たち逃げてくれない。この部屋は空調は独立してるんでしょう?冷房入れて。外に出て行くのが早くなると思う」

がそう指示をする。

「は、はいっ!」とアフロヘアの少年が窓を開け、メガネを掛けている少年が冷房を入れる。

「...瑞希。トゲー?」

部屋の中にいる蛇は全て白い。だから、瑞希がうっかり召喚してしまったものなのだろうと思って名前を呼んでみた。瑞希は寝ていても、トゲーは寝起きがいいほうだ。

「とっげ〜!」

生徒会室の中のソファのあたりからトゲーの声がした。どちらかといえば、窓側だ。

やはりそうか。

「ほら、方丈君」

一応蛇は暖かさを求めて窓際に向かっていったがそれでも慧の周りには数匹の蛇がとぐろを巻いている。

手を伸ばしてきたに慧ははっと我に返った。

「だ、大丈夫です!この程度の蛇なんて、この方丈慧にとっては些細な存在です」

蒼い顔のまま慧がそういう。

「...なら、いいけど」

そう言いながらはソファに向かった。

「瑞希、起きなよ。人様の部屋で寝ないの」

肩をゆすって起こしているとトゲーが思わず滑り落ちた。

落ちた先は蛇の大群の中だ。

蛇の一匹がトゲーに照準を合わせる。

「ト、トゲーー!トゲトゲッ!トッゲー」

トゲーが何か説得するように鳴くが、その蛇は口を大きく開けてトゲーに迫った。

「トゲーーー!!」

「この子はダメ」

蛇がカプリと噛んだのはの右手だった。トゲーは左手で保護している。

「トゲー!?」

瑞希が親友のピンチに飛び起き、その視線の先には蛇に噛まれたの手があった。

ボタボタとまた色々落ちて来たため部屋の中の生徒会メンバーが悲鳴をあげる。

「瑞希、増えてるから。落ち着いて。大丈夫だからね。誰か、草薙先生連れてきて」

の言葉にまたアフロ君が返事をしてそのまま部屋の外へと駆けていった。

「せ、先生...大丈夫ですか?」

「ちょっと痛いくらいだね」

トゲーを瑞希に預けては蛇をぶら下げたまま窓際に寄った。

「ほら、出て行く」

そう言って自分に噛み付いている蛇を剥いで窓の外に人が居ないことを確認して落とした。

「救急箱、要る?」那智がに聞き、「当たり前だ!」と答えたのは慧で、彼は慌ててよってきた。

「血が出ています、先生」と言いながら慧が消毒を取り出す。

「そりゃ、噛まれたからねぇ。けど心配するほどでもないよ。さっきも言ったけど、毒のある種類のものじゃないから」

「どうした!って...あー」

アフロ君が呼んできた一が派手に部屋の中に入ってきて何故自分が呼ばれたかを察した。

「噛まれたのか?」

「トゲーが食べられそうになったからね」

意外と器用でもないらしく、慧の巻く包帯は少し緩いし不恰好だ。

しかし、は文句を言わないし、一も自分がしてやるとは言わない。慧がそれだけ一生懸命なのだ。

爬虫類を全て部屋から追い出し、一息ついた。


「で、方丈慧君。本は?」

「あの、でも...先生右手が...」

「あー、なら大丈夫だぜ。元々の利き手は左だから」

「そういうこと。自分の名前を書くくらい左手で出来るよ」

そう言って手を差し出した。

慧は少し戸惑った様子を見せたが、本棚に入れているが書いている本を取り出した。

「あの、こちらにお願いできますか」

「はいはい」と軽く返事をしては左手に油性ペンを持った。

「那智様。あの人は...?ここ最近学園で姿を見ますし、『先生』って...もしかして、あの本の作者ですか?」

メガネを掛けた生徒会執行部が声を掛けてくる。

しまった、と渋い表情を作ったのは慧だ。彼女は自分の正体を隠したがっている。

どう誤魔化すか、と悩んでいたが、「そうだよ」と肯定したのはだった。

「せ..!さん!?」

「まあ、ここで誤魔化すのも難しいし。生徒会執行部が保証してくれる身元なら一般生徒たちからも疑わしげに見られることはないだろうしね。なので、保証してね」

そう笑いながらは言った。

生徒会執行部はきょとんとした。あの那智までも。

が、皆一様に苦笑した。

「分かりました。さっき、慧様を助けてくださった御礼もありますからね」

そう言ったのはメガネの会計、吾妻と名乗った。アフロ君が川久保で、紅一点が小宮山とそれぞれが名乗った。

はペンネームではなく、本名で呼ぶように彼らにお願いし、彼らも了承する。

「そうそう、せんせい」

「那智君って意外とうっかりさんだよね〜?」

ニコッと微笑んでが言う。わざと『先生』って言われているのは分かっているがあえて婉曲的に指摘している。

「はは、ごめん。サンは、おれと慧のことフルネームで呼んでるけど長くない?」

「長いねぇ。けど、『方丈君』だったらどちらと区別つけられないでしょう?」

「うわ、意外と間抜けだね。名前で呼べばいいじゃないか」

「本人たちの同意なくして名前で呼ぶのは失礼だと思っていたので。だからといって、『名前で呼んでいい?』って言うほど親密な仲でもないので」

「おい、瑞希。ちょっと冷房効きすぎじゃないか?」

何となく、部屋の中の気温が下がってきている気がしてきた一が瑞希に問う。しかし瑞希は少し不機嫌な表情をして、

「あいつが悪い。に喧嘩売ってる...」

といった。その言葉に一は頷く。

まあ、そうだよな。そして、真正面から買ってるはちょっと大人気ないよな...

「では、さん。僕たちのことは名前で呼んでください。その方が分かりやすいですし、学園内でも大抵の人がそのように呼んでいます」

と那智の間の険悪な空気が読めていないのか、読ませていないのか、慧がそう提案してきた。

「了解。以後そうさせてもらうわね、慧君。よろしくね、那智君」

少し照れたように笑う慧に対して、那智は少し気に入らない感じを醸し出している。しかし、明らかに敵意を見せたらさすがの慧だって気づくだろうし、慧に叱られるのはイヤだから黙ることにした。


「よし、終了。じゃあ、帰ろうか。瞬のおごりだし」

がそう言って一と瑞希に声を掛けて生徒会室を後にした。

今回のリレーで全く働かなかったから瞬が皆にご馳走するという話になった。というか、がそうした。

瞬は物凄く嫌がって全力で抵抗したが、バイキングで飲み放題つきの安い庶民的な店にするということで何とか頷かせた。

それに対して翼が難色を示したが、それはが丸め込んだ。

永田がいないと翼を丸め込むのは結構楽勝だ。背後に永田がいたらここで苦戦しただろうが...

正門へ向かう途中、体育祭で捕獲したクマに出会った。

先ほど生徒会室で貰ったクッキーをお礼に渡す。

一もクマに気づいたが、に釘を刺されていたこともあって無理やりハグをすることはなかった。

だから、クマも大人しく一に撫でられることに甘んじた。









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桜風
09.8.21


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