Dear my friends F 25





職員室に珍しくアラタがやってきた。

「ティンカーちゃん。お願いがあるんだけど」

「どうしたの、アラタくん。何?」

目を丸くして真奈美が話を促す。

「今日の補習はエンジェルちゃんに頼みたいんだ」

「え?!どうしたの、ミネミネ??」

近くで話を聞いていた悟郎が驚いて思わず声を上げる。

「エンジェルちゃん、今日用事がある?」

「ないから、ポペラオッケーだけど...ミネミネこそ熱でもあるんじゃない?」

「じゃ、放課後ヨロシク」

そう言ってアラタはさっさと職員室を後にした。

真奈美と悟郎は顔を見合わせたが、悟郎はすぐに何かあったなーと察して補習用のプリントを大量に作り始めた。


放課後、アラタの補習をするために教室に向かった。

真奈美はいつも彼らA4をアホサイユでまとめて補習しているから、一人別の補習を受けると言ったアラタは別の部屋に移る必要があった。

「で、ミネミネ。補習してとか言っておきながらなんで机の上には何も出てないのかな?」

呆れた口調で悟郎が言う。

「だってぇ〜、補習受ける気無いんだもん」

「じゃあ、何だって補習を受けたいって言い出したのさ?」

アラタは昨日に偶然会ったことを話した。

「あー、そうなんだ?もう!ボクポペラ心配してたのに、ミネミネとお話してたんだね」

頬を膨らませて悟郎が呟く。

「え?なんでエンジェルちゃんはサンを探してたの?」

「昨日、キヨからメールが入ったんだよ。B6全員に。ちゃんの姿が見えないから、ちょっと探してくれって」

アラタが首を傾げる。

悟郎は苦笑して高3の夏の話をした。今は随分丈夫になったとはいえ、一時期は長生きできない程度に体を悪くしたことがある。

そのとき、往来で彼女は倒れていて動けなくなった。

それの第一発見者が清春で、それがあったから彼女の体の心配は意外なことに清春が一番しているのではないかと思われる。


「ああ、だからか」とアラタは納得した。

昨日、の話を聞いていると息を切らせて清春がやってきたのだ。



「ンで!オメェは家にいねェんだよ!!」

苛立ちを露に清春が近づいてきた。

「あ、ハル。うわ、もうこんな時間??」

「つうか、人様にお願いしているなら家で待機して探させるなんてふざけたことするなっての!!」

ちらりとアラタを見たが、彼に関しては無反応だった。

「ごめんなさい」とは心底反省したように頭を下げた。それを見て清春は盛大な溜息をついただけでそれ以上は言わず、携帯を取り出して一に電話を始めた。

「アラタ君、ごめんね。話の続きはゴロちゃんに聞いて。わたしが話して良いよって言ってたっていったらたぶん話してくれるから」

そう言って慌てて立ち上がり、スーパーの袋に手を伸ばした。

「ンだよ、それ。おら、持ってやるから貸せ」

そう言って通話を終えた清春がが持とうとしていたスーパーの買い物袋を持つ。

「さっさと行くぞ」

「うん、ごめん」

そう言っては少し足早に歩く清春の後を小走りで追いかける。

サン、忘れ物だよ!」

先ほど袋から取り出した長ネギを振りながらアラタが声を掛けた。

は慌てて戻ってきてそれを受け取る。

「パソコンが壊れたっぽいからハルに直してもらうの」

「へえ。意外!」

「そう。意外と優しいんだよ」

こそっとそんな会話をしては長ネギを片手にまた駆け出す。公園の入り口では清春が足を止めてを待っていた。

「ホント、意外だな...」

面白そうにアラタは呟き帰ることにした。



「なるほどねー。で、話の続きはこのゴロちゃんに聞くように、って言ったんだ?」

「そーゆーこと。途中までだったから余計に気になってサ」

「んじゃ、まずはゴロちゃんの補習からだね」

「ちょちょちょ!待ってよ、エンジェルちゃん。オレの話、聞いてた?」

「聞いてたよ。でも、聞きたいのはミネミネの方の事情でしょ?ゴロちゃん的には、ちゃんが良いって言ったことだし、話すのは吝かじゃないけど...
今朝ミネミネが補習を申し込んできてから一生懸命作ってみた補習プリントが無駄になるのはもんのすっごーーーくイヤだから、補習が終わってから。補習が終わったら、余った時間で話してあげるよ。さ、駄々を捏ねてたら時間がなくなるよ!」

そう言って悟郎はプリントをアラタの前に置く。

「ゴロちゃんもね。昔は補習を受けたんだよ」

悟郎のその言葉にアラタは驚いたように顔を上げた。

ちゃんが、補習を見てくれたんだ。今の方丈兄弟みたいに。あんな居丈高じゃなかったけど。勿論、担任のセンセや教科の担当のセンセもみてくれた。すこーしずつだけど、ベンキョが面白くなったな」

「なになに?昔話でオレを怪獣しようとしている?」

「その『怪獣』じゃないでしょ!全く...
ボクが頑張ったらセンセたちも、ちゃんも喜んだし、何だか『分かる』と面白くなってくるんだよね。世界が広がるって言うか。ま、言葉で言ってもわかんないってのはボクも経験済みだから、取り敢えず目の前の補習でもしよっか」

悟郎の言葉に抗議の声を上げるアラタだが、悟郎は聞く耳を持つはずがなく、溜息をついて大人しく補習のプリントに取り掛かる。

結局、補習が終わったのは申請していた時間の10分前で、悟郎も情報を選んで話したものだから情報的には半端すぎてアラタの欲求は満たされなかった。

「エンジェルちゃん。明日、リベンジ...」

唸るようにアラタが言う。

「望むところ!」

悟郎は明るくそういい、肩を落として正門へと向かう教え子の背中を見送りながらほくそ笑んだ。









Next


桜風
09.8.28


ブラウザを閉じてお戻りください