| 「『那智文庫』..って何?」 新刊発売後に聖帝学園に行くと偶然会った慧に生徒会室に招かれた。 現在、生徒会は大きな権力を手にしたと聞いていたので、それはそれで興味があった。 生徒による生徒の懲罰権。 無駄なものを与えるんだな、とは苦笑する。 生徒による自治などではなく、それは生徒への指導を怠る教師の言い訳だ。 彼らはまだ子供で、他の生徒と同じく未熟だ。 未熟なものがそんな大きな権力を押し付けられればおかしな方向に向かってしまうのは容易に想像できることではないか。 どんなに成績が優秀でも、精神的にはまだ大人に比べれば足りないものが多いはずなのだから... 生徒会の強権に興味があったので慧に誘われてそのまま生徒会室に向かったが、そのままの新刊の話になり、どういった経緯か『那智文庫』の話となった。 「へー、面白い。那智君は作家さんだったんだね」 そう言いながら室内に居る那智を見た。 「えー、そんな大したものじゃないですよ。昔、本を読まなかった慧が興味を持つようにって書いていただだし」 「どんなのがあるの?」 那智ではなく、慧に聞く。 「そうですね。『ツンデレラ』とか...」 ナイスネーミング! 「『不思議の国の有田』とか」 誰だ、有田って! 一々突っ込みたくなる。 「ねえ、それまだ持ってる?」 が聞くと「ええ、勿論」と慧が誇らしげに頷いた。 「今度貸してよ。那智君、良いでしょ?」 一応、作者に許可を求める。 「ま、それはもう兄さんのだから別にいいけど」 肩を竦めながら那智が言った。 面白い娯楽を見つけてしまった。 「では、明日早速生徒会室に持ってきます。都合のよろしいときにでも来てください」 慧が言ったが、は渋い表情を見せた。 「どうかした?せんせい」 「方丈弟は本当に物覚えが悪いうっかりさんだよねぇ。まあ、方丈弟の話はどうでもいいんだけど。明日からちょっと海外に出るので、ねー。そうか、そうだったなぁ」 「自分の予定も頭にはいっていないんですか〜?容量小さいんですねー」 「こう見えて多忙なものでぇ」 何だか薄ら寒くなる2人の雰囲気に生徒会のメンバーは君子危うきに何とやらだったが、どうもその空気が読めていない意外と天然な慧が「では、」と代替案を出そうとしている。 こういうところも尊敬してしまう。 「もし、この後の都合がよろしければご自宅の方にお持ちしますよ」 「慧!?」 こんな女にそこまでする必要はない、と言外に那智が言う。 もそこまでしてもらうのは忍びないし、あとで那智が面倒くさそうだから避けたい。 「...こちらから借りに伺ったらご迷惑かしら?」 「うん、勿論!常識、頭の中に入ってる?」 「那智!いいえ、構いません。が、僕たちは今日の活動は少し遅くまで残りますが...」 那智をたしなめてそう言う慧に那智は膨れる。 ああ、やっぱり面倒くさいことになるのか... しかし、どうせなら早く読みたい。 「じゃあ、何時ごろなら家に帰ってる?こっちも仕事とか荷造りとかあるから、その時間以降に伺うから。あと、携帯の番号も教えておいて。先に電話して伺いたいし」 の言葉に頷いて慧は自分の携帯の番号を彼女に教え、自分も彼女の番号を教えてもらった。 「おれのも知りたいでしょ?」と対抗心を燃やした那智が番号を登録させ、勿論の番号も自分の携帯に登録する。 「さん。何か困ったことがあったらいつでも電話してください」 困ったことがあってもさすがに年下は頼らないなーと思いながらも「ありがとう」と返しておいた。 その気持ちだけは受け取った。 生徒会室を後にした。 「あっれ〜?」と背後から声を掛けられる。 小動物。 はそんな感想が胸に浮かんだ。 「えーと...ヤクモとかって人?」 「ピンポン、ピンポン!って、その言い方、何〜?!」 膨れて言う八雲には首を傾げる。 「ボクのこと知らないの?!」 「知らなかった、かな?テレビは基本見ないし、日本に来て1ヶ月位してから瑞希のお姉ちゃんに教えてもらったし。えーと、ゴールドエクスペリエンスのセンターの子」 「そうだよ。みんなのアイドル、やっくんだよ!」 「多智花!!」 少し離れたところから瞬の声がした。 「うわ、シュンさん。まだ追いかけてきてる!!」 「、そいつを捕まえてくれ!!」 がヤクモと一緒に居るのに気が付いた瞬がそう言ったのでは目の前の小動物系アイドルを捕獲した。 「えー!何でシュンさんの味方するの?!」 「まあ、今知り合った後輩よりも、1年苦楽を共にしたクラスメイトをとるでしょう、普通」 「ボク、アイドルだよ?」 「偶像崇拝に正直興味がないって言うか...」 そんな会話をしているとやっと瞬がやってきた。 「助かった、」 「いいえー。じゃあ、引き渡したよ」 そう言っては保健室へと向かう。一応、学校に来て長い時間滞在するときは上條に挨拶をするようにしているのだ。 「ねえねえ、瞬さん」 「何だ。補習はやめないぞ」 「そんなんじゃないよ。あの人、何?」 「か?俺たちの友人だ」 「ふ〜ん、それだけ?」 体育祭のときの悟郎の表情を浮かべる。 「ああ、俺にとってはそれだけだ。まあ、多少手がかかるが、お互い様だからな」 そう言って瞬は八雲を連れて先ほどまで補習の場としていた教室へと足を向けた。 八雲は一度廊下を振り返る。 もうの姿はなかった。 |
桜風
09.8.28
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