Dear my friends F 30





那智文庫は非常に楽しかった。

実際の、元となった話を知っているとこのパロディ具合が何とも癖になる。

これを幼少のみぎりに書いたというのだから、那智はやはり『天才』だと思った。

土産は空輸しているし、荷物もついでに空輸した。

祖母が預かったものは2人の人からの情報だ。

1人は永田、もう1人は現理事からだ。

理事はついでに愛娘の自慢話も入っていた。親ばかになるだろうな、と思っていたが、見事予想にたがわぬ、むしろ予想以上のバカっぷりに笑いがこみ上げてくる。

永田から貰った情報は今の彼の仕事の進捗具合だ。

概ね計画通りのようで、彼は翼と一緒に居ることが多いのに、やはり優秀な秘書は違うよな...と感心してしまう。

そして、理事からの情報は、頼んでいたものと今後の理事会の動きだ。

理事会の動きが分かれば、こちらが先手を打てる可能性も出てくる。正直、後手に回っているからな...

思ったよりも自分の調べものの方が進んでいなくて、ちょっと焦りを覚えた。



祖父母の家に泊まった翌日からは実家に帰った。

家を手入れしないと傷んでしまう。

隣の次男坊は家を出て家庭を持ったと聞いた。

家に知らない『母親』が居たらどうしよう、と思ったがそれは杞憂に終わった。

最近は彼のナンパは『ポーズ』に過ぎないものとなったようだ。

星太がそう言っていたのは本当のようで、それはそれで安心と言うか、気になるというか...

の滞在中、父が一度だけ戻ってきた。

日本食食べたいといわれて作ったのは昔一のお母さんがよく作ってくれていた肉じゃがだ。

「けど、この家の調味料、そろそろやばいかもよ」

「え、ホント?ドクターズにあげようか...」

殆ど家に帰らないし、元々料理が出来ない父なので、家にある調味料は無用の長物となっている。

「引き取ってくれるならそうしたほうが良いかも。賞味期限が来る前に」

「そうだね、お願いしてみよう。...さん。日本は、どうだい?」

「楽だよ。『みんな』が居るし」

「そうか」と安心したように返す父の表情に落ち着かなくなり、「あ!」と声を上げる。

父も驚いたように顔を上げた。

「星太」

「星太が、どうかしたのか?」

「滞在費全部持つってホント?!」

「まあ、バイトしてくれたしね」

なんでもないことのようにいう父に深く溜息をつく。

「甘やかしすぎ!」

「良いじゃないか。お金なら、一応あるんだし。特許とかの知的財産、結構持ってるんだよ。今のところの給料も良いし。普段僕が使わないから、1ヶ月の滞在費くらい...」

「世間的にそれは『くらい』じゃないよ。もう!」

ここにも非常識人がいた。

「しかし、泊まる場所は自分で確保したって言ってたぞ?」

「一のとこね。あの子もホンット世渡りが上手だよね。あー、甘やかしすぎたかな...」

の言葉に父は噴出した。

「なに?」

眉間に皺を寄せて少し不機嫌にが返した。

「いや、なんでもないよ。そうだね、さんに星太を任せっきりだったもんな」

慌ててそう誤魔化す。

誤魔化したな、と思いつつも「あ、そう」と返してそれ以上追求はしなかった。

最近、お互い丁度良い距離を見つけた気がする。

自分の目の前でナンパとかアホなことをされたらムカつくし、反射的にドツキに行くけど、突然知らない女性を「お母さんだよ」と紹介されても「ふーん...」で終わらせることが出来るような気がしている。

それを思うと自分は大人になったのかもしれない。

自活できているのが一番大きな要因なのだろうが...



日本に帰ってすぐにしたことは、菓子作りだ。

帰国して3日して聖帝学園へと足を運んだ。

手には那智文庫と菓子の入った小さな袋を2つ。

何だか予定していたよりも通っているな...

そんな自分が可笑しくて小さく笑った。









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桜風
09.9.4


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