Dear my friends F 32





「姉ちゃん、待って!」

星太が駆けてきた。

「廊下を走ったら慧君に怒られるよ」

足を止めて苦笑する。

2人並んで歩き始めた。

「そういえば、何で生徒会室に?『部外者が!』とかって言われなかった?」

が聞くと星太は苦笑して「言われた」と頷く。

「ていうか、俺、慧たちに会ったのは補習合宿についていったときが最初だから」

弟の言葉には眉間に皺を寄せる。

「どういうこと?」

星太は笑いながらが居なかったときの話を始めた。


クラスZの生徒の半数近くが追試のクリアできなかった。

そこで、10日間補習合宿を強行することになった。

土地や建物なら真壁財閥所有のあれやこれやがある。と、言うわけで場所には困らない。

生徒会は補習をする生徒たちの監視役として随行した。

その補習合宿中に試合の日程が入っている一は星太も連れてきたのだ。

さすがに預かっている未成年を放ったらかしに出来ないとか何とかで。

ホントのところは、放ったらかしに出来ないけど、星太はあのの弟で、アメリカ在住だから少なくとも英語を教えるなんてお茶の子さいさいだろうと思ったのだ。教える側は多いほうが良い。

そこで、星太は合宿で教師たちと一緒に年も変わらない生徒を教える側に回ったのだ。

最初は一が連れてきたという時点で物凄く怪しまれたが、取り敢えず、役に立つからと一が周囲を説得し、教えさせると意外と上手くてそのままナチュラルに聖帝学園に仲間入りしてしまったとか。


まあ、比較的人懐っこいほうだもんな...

隣を歩く弟をそっと見上げては小さく息を吐く。

「そういや、肝試しもしたんだ」

嬉しそうに言った。

「それはそれは...」

盛り上がっただろうなぁ...

無駄にB6が張り切ったに違いない。

「...っぴょーーーーん!」

「がふッ!」

突然体当たりされてはよろめく。

星太が慌てて手を伸ばしてを支えた。

「おいおい、ヤクモー。姉ちゃんこう見えても女なんだから、突撃されたらこけるくらいはするって」

「おい、コラ」

「あはは、そうだね。サンって言うんでしょ?サンって呼ぶねー」

屈託のない笑顔を作って八雲がそう宣言する。

「今日は、誰の補習サボって逃げてるのかナァ...」

低く唸るようにがゆっくり顔を上げながら八雲に言う。

目が据わっており、これはまずい、と八雲もさすがに理解する。

「え、んー...」

「星太、確保」

「はいはい」

に指示されて星太は面倒くさそうに八雲を確保した」

「ちょっと!セーちゃん。裏切る気?!」

「姉ちゃん裏切る方が怖いからね」

八雲の抗議にそう返して星太は姉を見る。

「あ、もしもし。瞬?八雲君確保したんだけど、今日の補習担当は誰か知ってる?あ。ハルなんだ?うん、わかった。電話してみる」

目の前でが電話を取り出して引き取り先を探しているようだ。

清春とも連絡がつき、は星太に八雲を連れて行くように言った。

「姉ちゃんは?」

「保健室。上條先生にお土産を渡してくるわ。あとでその教室に行くから」

そう言っては保健室に向かう。

「セーちゃん、お姉ちゃんが好きなんだね」

「まあね。俺を育ててくれた人だから」

星太の言葉に八雲は不思議そうな表情を浮かべて見上げる。

「ま、家庭の事情ってヤツ。こう見えて複雑なんだよ」

苦笑して星太は八雲を連れて清春が居るはずの教室へと足を向けた。


「しつれいします」

ノックをして入ると上條の姿はなく、クマしかいなかった。

「あれ?上條先生は??」

一ではないのでクマの言語は分からない。

だが、取り敢えず声を掛けてみた。身振り手振りをしてくれるから少しなら分かるかもしれない。

「くまっ!くまくまふぁに〜」

「すぐに戻ってこられるのかな?鍵が開いてたし」

首を傾げながら言うとクマたちが「くまくまっ!」と頷くからそうなのだろう。

お土産だけ机の上に置いて帰ろうかと思い、バッグの中からメモ用紙とペンを取り出した。

「おや、さん」

保健室のドアが開き、上條が戻ってきた。

「ああ、上條先生。これ、向こうのお土産です。理事長にもお渡しください。ちょっと戻る用事がありましたので。あと、こっちはクマちゃんたちに。ナッツです」

クマは自分たちに土産があるとは思っていなかったらしく、非常に喜ぶ。

「ああ、でも。普段あまり食べてるのみないから好くじゃないかもしれんませんけど」

一応そう付け加えた。

それでもクマたちは喜び、「ああ、これは。この子達にも気を遣ってくださってありがとうございます」と上條が礼を口にする。

「では。あ、そうそう。弟にも許可証を出してくださったそうですね」

「いえいえ。彼は、ウチの生徒たちの補習を見てくれたらしいですし、何よりもアメリカ在住の同年代の子と交流を持つことが出来れば、それはきっとプラスになるでしょうから。何でしたら、ウチの大学に編入してもいたいくらいです」

笑いながら言う上條に

「大学も向こうのに通うと言ってましたから。卒業するまで戻ってこないと思いますよ」

と返しておいた。

保健室を後にして振り返る。

...欲張りだな。

利用出来るものは手元に置いておきたいと考えるのは、まあ分からなくもないが...

不敵に笑っては清春が補習をしている教室へと向かった。









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桜風
09.9.11


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