Dear my friends F 33





保健室を出て清春が居ると言う教室へと足を向ける。

「お???」

声を掛けられて振り返るとTシャツとハーフパンツの一が居た。

「ああ、一。丁度よかった」

そう言っては一の方に足を向ける。

「なんだ?いつ帰ってきたんだよ。じいちゃん、ばあちゃん元気だったか?」

「元気元気。おじいちゃんのご飯は相変わらず美味しかったし」

笑いながらが返し「そっか」と一も笑う。

「一センセイはコーチ?」

「ああ、まあ。頼まれたからな。別にイヤじゃないし」

汗だくの一は笑いながら言う。

この暑い最中、よくもまあ、グラウンドを駆け回っている元気があるなぁ...

「そうそう、これ」

そう言っては小さな袋を渡す。

「何だ?」

「星太がお世話になっているのでお礼ですよ。お菓子作ってきた。皆にはないからひっそり食べるように」

の言葉に「じゃあ、今食う」と言って袋から取り出した。

「お行儀が悪いなぁ...」

呆れながらいうに「良いだろう」と言って一口で口に入れる。

さすがにそれには目を丸くした。

「ふはひな!」

「口の中に物を入れた状態で喋らない!」

に叱られて頷き、一はモグモグと噛んでごくりと飲み込んだ。

「動いた後だから余計に美味いなー!」

「お粗末さまでした」

はぺこりと頭を下げる。

「ねえ、一」

「ん?どうした??」

「一の家って、まだオーストラリア?」

ああ、実家のことかと納得して「たぶん」と返す。

「やっぱりあやふやなんだ?」

「んー、まあなー。家族がたまにイタリアとか日本とかに来るからそんとき会うことはあるけど、困ってないからなー」

相変わらずおおらかと言うか...

「どうした?」

「おばちゃんに、会いたいって思ってるんだけど...」

「仕事の関係か?」

として」

の言葉に一は頷き、携帯を取り出す。

「オーストラリアだったら、今は夜だっけ?」

「季節は逆だけど、時差はそんなにないよ。ってか!日本代表のユニフォームを着て各国で試合している人が時差を考えられないって致命的だよ!!」

に指摘されて一は肩を竦める。

暫く通話をしていたが、「ほい」と携帯を渡される。

「へ?」

「お袋が代われって。ああ、携帯預けとくな。あとで取りに行くから。どっか行く予定だったのか?」

「ハルの補習教室。星太もいるし」

が答えると「了解」と返して一が去っていく。


「も..もしもし?」

ちゃん?!あっらー!大人っぽい声になったじゃないの!!』

電話の向こうの一の母親の声は変わらない。

「あの、お仕事中ですか?」

『ん?大丈夫よ。で、どうしたの?一からの電話って珍しいなーって思ったけど、ちゃんが私に会いたいって言ってるっていうから...』

「久しぶりに、おばちゃんに会いたいって思ったんです。一に聞いてもやっぱりわかんないって言うし...」

の言葉に一の母は笑い、「敬語なんてやめてよー」と言う。

『そうねー、じゃあ、冬に来る?一ってば今学校の講師してんでしょ?夏はあの子もサッカーがシーズンだから来いって言うときついだろうし。冬は一応シーズンオフのはずだから。年末とか...あ、ご家族で過ごす予定?』

「特に約束はしてないけど...」

『じゃあ、決定。一に連絡..しても忘れるだろうから、ちゃんに連絡することにするわ。携帯持ってる?番号とか教えてよ』

あれ?もっと「難しいなー」って流れになるかと思ったのに...

言われるままに携帯の番号とメールアドレスを口頭で伝える。

『おっけ。了解。年末、楽しみにしてるわよ!!』

そう言って一の母親は通話を切った。

何だか、その勢いに押されては暫く呆然と携帯を耳に当てたまま廊下に突っ立っていた。

「...おばちゃん、相変わらず」

呟いて可笑しくなり、は声を上げて笑い始める。

幸いなことに、近くには生徒はおらず、突き抜けるようなの笑い声は遠慮なく廊下に響き渡った。









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桜風
09.9.11


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