Dear my friends F 38





「やあ、サン。月夜に貴女と会えたこの幸運..って、これもダメ!?ダメなんだね??!!」

がファイティングポーズをとったためアラタは慌てて後ずさる。

「うん、ダメ。『こんばんは』だけでいいと思う」

「んー。でも、それって詩的じゃない系?」

「普通の、ごく普通の挨拶を希望します。こんばんは、アラタ君」

「うん、こんばんは」

「八雲クンもこんばんは」

アラタによじ登っている八雲にも挨拶をする。

「えーー!?何でピーちゃんの方に先に挨拶するの??」

「先にアラタ君が声を掛けてきたから。...なんで八雲クンはアラタ君によじ登ってるの?」

不思議そうには八雲を見上げた。

「んー、だってね。つむじを見下ろすと征服した気になるんだもん」

「...へぇ」

詳しく聞いたら面倒くさそうだな、とは諦めた。

「アラタ君は嫌じゃないんだ?」

「んー、まあね。慣れたってのもあるけど、やっくんって小さくて軽いし。あ、サンも乗ってみる?むしろ、サンなら腹に乗ってもらいたいって..ガフッ」

アラタは自身の発言のお陰で頭上の八雲から脳天チョップを受け、傍にいた悟郎から肘鉄を食らう。

は不思議そうにアラタを見上げた。

「マウントポジション、だっけ?たこ殴りにされたいの??」

心底不思議そうにが言う。

「え、あの..あれ?知らない..の?」

「ミネミネ」と悟郎がものすごく優しい声で名前を呼んだ。

「何、エンジェルちゃん?」

ちゃんに妙なコト言うと..シメるぞ」

ドスの利いた声で悟郎が脅す。

「え、違うの?」

「んー、たぶんね。まあ、ちゃんはわかんなくていいよ」

「え、やだ。知りたい!ね、どういうこと??」

教えられねぇ...

アラタの言った言葉の意味を正確に理解している周囲は皆一斉に同じことを思った。

悟郎、八雲、アラタは目を逸らせた。周囲にいた瞬や千聖も同じくで、弟の星太すら気まずそうに顔を背けている。

「何でみんな知ってるの?どうして教えてくれないの??北森先生、知ってますか?」

「え!?あ..いえ。その...」

ここで話を振られても...



瑞希が名前を呼ぶ。

「瑞希は知ってるの?」

駆け寄って瑞希に聞くと「は知らなくて良いんだよ」と言われては目を見開いた。

「瑞希も知ってるんだ。教えて?」

「......ダメ」

「瑞希の意地悪ーーーー!!」

叫びながらは遠ざかる。

ボタボタと白い爬虫類がわんさか落ちてきた。

「うわぁーーー!」「斑目先生!!」「ミズキ!気持ちはわかるけど落ち着いて!」

など、後方では阿鼻叫喚の地獄絵図。

それを振り返ることなく、は自分の視界に入った幼馴染の元へと駆けていく。

「一!」

「お?どうした??」

自分の胸に飛び込んできたを少なからず困惑しながら一は受け止めた。

「ねえ、おなかの上に載るのってマウントポジション以外に何かあるの?」

「は?」

何だ突然...

誰か詳しく教えてくれないかな、と周囲を見渡すと慧がやってきた。

「ああ、なあ。これとあれってどういうことだ?」

がしかと抱きついてきているのはちょっと嬉しいけど、意味がわからないから単純に喜べないというか...

慧は自分が見て聞いた先ほどのアラタの発言やの反応、取り敢えずすべて客観的に話した。

「...あー、そうなんだ」

「ま、まさか...一も知ってるの?!」

「い、いや。知ってるってか..その経験はないけどー...」

の言ったマウントポジションならあるけど、と思いながらしどろもどろに答える。

「一の..一の裏切り者ぉーーーー!」

「ぇぇぇえーーーーー!!!???」

は駆けていく。

さん!」と慧が追いかけていった。


さん!」

「慧君だって知ってるんでしょう?どうせわたしは本を読んでたけど、そんな知識は得られなかったわよ」

「いいえ、さん。実は、その..僕も知らないんです」

慧の言葉にはぱっと表情を輝かせた。

「ホント!?」

「はい。だから、僕も皆がなぜあんな反応をするのかわからなくて...」

「じゃあ、今度一緒に図書館行ってみよう。調べてみよう!」

は慧の手をガシッと掴んで提案した。

「はい!僕もまだまだ知らないことがたくさんあるようですから」

2人は意気投合した。


「...ミネミネ。責任取ってよね」

なにやら意気投合した2人を見ながら悟郎が言う。あの様子だと一緒に調べようって話になったのだろう。

「え!?俺??」

「とーぜん、だろう?兄さんも変なことに興味もって...」

「でもでも、あの2人って本当に知らないの?!何で??サンは作家さんだし、方丈王様も男じゃん?」

さすがにあの反応には困った、とアラタは困惑気味に言う。

「兄さんは純粋なんだよ」

「姉ちゃんは、男女の恋の機微に疎いから。というか、そういうものの知識は本当に小学生レベルだからなー。生物学上の両親のお陰で」

「たくさん恋愛小説とか映画とか見て勉強したと言っていたが...そういうのは無かったんだな」

呆れたように瞬が言う。

に、嫌われた...」

瑞希がこの世の終わりのような声で呟く。

「まあ、そういうことなら..実践で..グハッ!!」

「ミンチになりたくなかったら少しは発言に気をつけろよ...」

いつの間にか皆の輪に入ってきていた一が拳骨を食らわせた。

「...嶺。一を怒らせるな。昔に戻られたら正直手がつけられん」

やさしい、気さくな先生だと思っていたのに...

一の豹変っぷりに真奈美は少し泣きそうになる。どうやら、B6はやはり一筋縄にはいかないらしい。

機嫌が直って戻ってきているに視線を向けた。

B6の手綱は彼女の手にあるらしいが、彼女もまた少し変わっているということが少しずつわかってきた。

先生...

聖帝に勤めていた恩師を思い浮かべる。

思い出の中の彼女は笑顔で自分を励ましてくれた。

が、がんばります...

真奈美は記憶の中の恩師に誓い、覚悟を決めた。










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桜風
09.9.25


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