Dear my friends F 41





「な、何で!?」

「どうぞ。冷たいオレンジジュースです。酸味で少しすっきりすると思いますよ」

「い、いやいや。永田さん、何で?」

は目を丸くしている。

永田は苦笑した。

「さすがに体調を崩したさんを放っておけるほど私は冷徹ではありませんよ。お別れしたとはいえ、ね?」

ふと周囲を見渡した。

だが、学校関係者はいそうにない。

どうしたものだろう、と思ったがどこで誰が見ているか分からない。クマが偵察しているかもしれないのだ。

「...ありがとうございます」

「隣に座ってもよろしいでしょうか?」

「どうぞ?もうついでですから、口調も前みたいに」

これはこれで興味がある、と思っては言った。

今まで永田の口調は敬語以外聞いたことがない。

永田は笑った。

「そうだな。じゃあ、遠慮なく」

うわぁ。誰だろう、この人...!

はおかしくなって笑いをこらえる。

「早く飲んだほうが良い。せっかく冷たいのに、温くなってしまう。それとも、飲ませてあげようか?」

「い、良いです!飲みます。一気飲みします!!」

宣言どおり一気飲みして...頭痛を覚えた。

「い、痛い...」

頭を抱えては呟く。冷たいものを一気に流し込んだからあのキーンとなる頭痛を味わうこととなってしまった。

「まったく、何をしているんだろうな。大丈夫か?」

優しい声でそういいながら髪を梳く。いつもの事務的な声音ではない。

なんだか、この永田を相手にしていると居心地が悪い。

しかし今更、今までのように接してくださいってお願いできない。

「だ..大丈夫です」

は、今までジェットコースターに乗ったことがないのか?」

「...ない、です。昔来た時は、星太が小さくて身長制限だったか年齢制限だったかで引っかかって、自分が乗れないって泣いたからわたしも乗らなかったんです。とりあえず、初体験です。けど、もう二度と乗りません」

こりごり、とは肩を竦める。

「そのほうが良いだろうね。は高低の落差のある乗り物は苦手なんだろう、きっと」

「...元に戻して、ってお願いしちゃダメですか?」

ちょっともう限界。

「ダメだな。言いだしっぺは君だからな?」

はぐっと詰まる。

永田は時々意地悪だったりする。


ふと、は思い出した。数日前の出来事を。

「永田さん」

に呼ばれて彼女に視線を向けた。

「どうした?」

「前、天君のおうちでアラタ君が言った言葉の意味って永田さんも分かるんですか?」

「...まあ。さんより大人ですから」

動揺したらしく、永田はいつもどおりの口調に戻った。

「じゃあ、教えてください!!」

「...私が、ですか?」

「はい!ネットで調べてみてもそれらしいのがヒットしませんでした。図書館に行ってみたものの、プロレス技でもないみたいで...」

うん、調べ方が悪い。

そう思ったものの、なんと言うか...教えても良いのだが、その後信頼関係が壊れたり、翼に怒られたり、終いにはの祖父母に命を狙われかねないと思う。

そこまでのリスクを負ってまでに教える必要はないだろう。とりあえず、当面は知らなくても困らないはずだし。

「説明するのが難しい、ですね」

本当に、難しい。言葉で言うには簡単だが、穏便に済ませることが非常に難しい。

「口で説明するのが難しいなら、実践で!」

「もっと難しゅうございます!!」

即否定されては目を丸くした。

「ごめんなさい...」

びっくりしたままは謝罪した。永田がこんなに強く言うということはかなり無茶を言っているのだろう。それくらいなら分かる。

「申し訳ございません。お力になれず...」

「いえ。じゃあ、まあ。口調はそのままで」

に指摘されて初めて自分の口調が戻っていることに気がついた。

永田は「かしこまりました」と苦笑する。

の要望にこたえられなかったのだから、仕方ない。


突然が立ち上がった。

永田は驚き、が足を向けている先の人物を見て「おやおや」と呟く。

「どうしたの?」

泣いている男の子がいた。小学生か、幼稚園生か。

「パパと、お兄ちゃ..んと...はぐれちゃった...」

「迷子、でございますかね」

を追って永田もやってきた。

「っぽいですね。ね、お名前言える?」

「きりおか..だい」

...ん?

は永田を見上げた。永田は頷く。

なるほど...

「だいくん、パパとお兄ちゃんと遊園地に来たの?」

「うん」

「どこでパパたちとはぐれたの?」

「向こう」

指差した先は...

「本日はヒーローショーが行われていたようですね」

さすが情報通の永田。

「翼も見たかったでしょうね」

「見せたら変身グッズを作られかねませんが...」

そうだなぁ...

は納得した。そしてそのとばっちりを食うのは一だ。

「だいくん、パパを呼び出してもらおうか」

が言うとじわ、と大の目に涙が浮かぶ。

「大丈夫!お姉ちゃんこういうの慣れっこだから」

そう言って笑った。昔から弟の面倒を見て育てたのでその経験が役に立ちそうだ。

永田が手を伸ばして大を抱き上げる。

「参りましょうか」

は頷き、迷子センターへと足を向けた。










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桜風
09.10.2


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