Dear my friends F 43





一通り遊園地のアトラクションを楽しんだ一行が最後の締めはやはりあれだろう、と向かった先は観覧車だ。

「で?どう別れる?」

「ティンカーちゃんとサンは別々が良いんじゃない?ほら、なるべく男だらけの観覧車を避けるために」

「はいはーい!ゴロちゃん、ちゃんと!!」

悟郎が挙手した。

「......ダメ、僕」

邪魔をするように瑞希が割って入り、を引き寄せる。

「何言ってんのさ!ちゃんはゴロちゃんと一緒が良いって言ってるんだよ!ミズキ、空気読みなよね!!」

負けじと悟郎もを引き寄せる。

「あ、あの...斑目先生、風門寺先生。さんが物凄くかわいそうです...」

真奈美がそう訴えるが、聞いてない。は大岡裁きを待っている状況だ。が、ここではどちらも手を離さないのは予想できる。

「くじにしたらどーかしらー??」

やる気なさそうにが提案した。

「よーし、わかった!どっちがあたっても恨みっこなしだよ!」

「望むところ...」

なんだか一騎打ちな雰囲気がかもし出されている。

「おい、俺様たちはアレに参加できないのか?」

天十郎が聞く。

「諦めたほうが賢明だ。ああなったらあの2人はかなり執念深いぞ。君子危うきに、ってやつだ」

と瞬がため息と共に返す。

ついでだから、と真奈美と一緒に乗るのに立候補した者たちもくじとなった。

公平を期すために、くじを作ったのは永田だ。スーパー秘書の永田が作ったものだから、公平さに掛けては折り紙つきだろう。

何故か皆、そうやって納得した。

くじの結果、と一緒に観覧車に乗るのは悟郎で、真奈美は星太と那智と千聖となった。

余ったものたちは何が悲しくて男同士で観覧車に乗らなければならないのだ、と全員が辞退した。


そんな経緯でやっとと2人きりになるチャンスが訪れた悟郎は決心していた。

5年前と同じ轍は踏まない。

今回は完全密室に2人きりで、第三者に邪魔されることはまずない。

ちゃん。ボク、ちゃんのこと、好きだよ」

何度も胸の中で繰り返していた言葉をやっと伝えることができる。

そう思って顔を上げた。

しかし、その言葉を口にすることはなく、「最近元気ないよね?何かあったの?」と言った。

最近、といっても結構前からだ。

時々辛そうな表情をしている。

は驚いたように目を丸くした。

「何?元気だよ??」

「そう?だったら良いけど。ボク、ちゃんには笑っていてほしいよ」

そう言って悟郎は微笑む。

「...ありがとう」

笑ったの表情はとても無理をしているのが良く分かる。

「ねえ、ちゃん。この風景をスケッチしたとして、それに色をつけたときに、空の色が黄色だったらどう思う?」

不意に突拍子もない話になった。

は驚いて外の景色を眺める。

「そうね、いいんじゃない?楽しそう」

その言葉を聞いて悟郎は嬉しそうに笑う。



高校3年のとき、ふと昔を思い出してに聞いたことがある。

今話したものと同じ答えだった。


移動教室で廊下を歩いていると空が真っ青でとても気持ちが良かった。

「ねえ、ちゃん」

「んー?どうかした?」

悟郎に呼ばれて足を止めたが返事をする。

「この空をイラストにして色を塗ったとして..青じゃない色..黄色とかオレンジにしたらどう思う?」

は空を見上げてしばらく考える。

昔、絵を習いにいっていたとき、悟郎は自由な表現を窘められたことがある。空は青で塗るものだ、と。

そう注意をされた後に自分の人生の師匠に出会った。

彼女は自由で、とても楽しそうにイラストを描いていた。空の色が何色でも良いといって笑った。

悟郎はそのときのことを今でも鮮明に覚えている。

「そうだなー。楽しそうだね」

は笑った。

否定せず、ただ『楽しそうだ』と肯定した。

悟郎はそれがとても嬉しくて、今思えばそのときからに惹かれたんじゃないかと思う。

それが今でもずっと彼女を想い続けて...



「今度、イラスト描いてみようかな」

「空が黄色い、イラスト?」

「うん、楽しそうなのを描く。そして、ちゃんにあげるよ」

そう言って悟郎は微笑んだ。

には笑っていて欲しい。

だから、彼女が笑っていられるような、幸せな気持ちになれるような飛び切りのイラストを描いてプレゼントしようと思った。

自分は彼女のことがとても好きだけど、困らせたいとは思わない。

気持ちを伝えて彼女が困るなら、自分はこの気持ちを仕舞っておく。

ちゃん、困ったことがあったらボクに言ってね。ボク、もの凄く頼りになるんだから!」

軽く力こぶを作って悟郎が言う。

「ゴロちゃん、ありがとう」

やはりまだ少し元気はないが、は笑って頷いた。









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桜風
09.10.9


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