| 遊園地からは翼が車で送ってくれた。 この後、翼は仕事があるからついでだ、と言ったのだ。 もちろん、運転は永田だった。 家に帰ると携帯がなった。 ドアに鍵を挿しながら携帯を取り出して、躊躇った。 毎年、この日。必ず電話をくれる。 「...もしもし?」 『?今どこだ??』 相手は、一だ。 「丁度家に足を踏み入れたところ」 『今から、ちょっと行っても良いか?玄関先で良いんだけど』 「...いいよ」 この日だけは、一の声を聞くとの胸に後ろめたさが広がる。 『じゃあ、今からバイクで20分くらいかかると思うけど...』 「了解」 自分の本心を表に、声に出さないのなんて慣れている。 声だけなら、何とか装える自信があるが... ドアを閉めてため息を吐いた。 先ほど、車の中で言われた言葉を思い出す。 『いい加減、待たせすぎだ』 何故知っているのかわからない。一が言ったわけでもないだろうが、もしかしたら親友の勘というやつかもしれない。 しかし、翼の言葉に胸をえぐられた。 でも、そのとおりだと思う。 甘えすぎ。 この先どれだけ待たせれば答えが出るのかわからない。 もしかしたら、出ないかもしれない... ピンポーン、とチャイムが鳴った。 時計を見るともう20分経っている。 慌てて玄関に向かって鍵を開けた。 「いらっしゃい」 「...どうした?」 一は目を丸くして顔を覗き込んだ。 「何が?」 が聞くと親指での目の端を拭う。 「泣いてるぞ。何かあったのか?」 「...もー、やだ」 そう言ってはその場に崩れた。 一は狼狽してちょっと躊躇ったが、をひょいと抱え上げ、「入るぞ」と断って家の中に足を踏み入れる。 家の中に入ってを降ろして座り、そのまま抱きしめた。 「何があったんだ?」 「わたし...わたしが大嫌い。何でこんな...」 どうやらは自己嫌悪の真っ最中らしい。 「オレは、が好きだぜ」 「おかしいよ!」 が声を上げた。さすがに一は驚いて目を丸くする。 「だって、こんなだよ。全然何もわからない、何もわかってない甘ったれで...他人の気持ちを考えられない、自己中な...」 まだ言い募りたそうにしているに「なあ、」と一が声を掛ける。 「誰かに、何か言われたのか?」 「違うもん」 ああ、言われたんだなと幼馴染の直感でわかった。 「誰がなんと言おうと、オレはが好きだし。がどんなにのことを嫌いでも、オレはが好きだ。嘘じゃない」 「ダメだよ」 がそういう。 「なあ、。オレは相変わらず馬鹿で、サッカー以外の取り柄ってないし、まだ足りないところだらけだと思う。こうやって、自分の想いを口にすることで勝手に安心してに辛い思いをさせている。けどな、」 一はの頬を両手で包み、自分と目を合わさせた。 「けどな、そのオレの気持ちは否定しないでほしい」 その言葉には目を丸くした。 「これは、オレの中の事実で、真実なんだ。が、自己中で甘ったれでもオレはが好きだ。 ...ホントはさ、毎年に好きだって言ってるのってやめた方が良いのかなって思うときあるんだぜ。ってほら、真面目だろう?絶対にプレッシャーになってるだろうな、って思ってた。 けどさ。1年に1回でも口にしないとオレ爆発しそうだから。本当は毎日でも足りない。オレ、言葉を奪われたら行動しかなくなって、を傷つけるかもしれないから」 「待たせすぎだ、って言われた...」 苦しそうにが呟いた。 たぶん、自分のことを心配した親友が気を利かせて言ったんだろう。ただ、残念なことにの性格は考慮されていない。 「ゆっくりで良いって、オレ言わなかったか?」 「でも、もう5年だよ」 「まだたったの5年だ」 はじっと一の顔を見た。 ここでキスしたら嫌われるかな... 目の前にの顔があって、少し屈めば唇を合わせることができる。 「信じらんないか?」 苦笑しながら一が言う。 は答えない。じっと一を見ているだけだった。 「んじゃ、約束だ。もし、この先。の答えが出る前にオレに心変わりがあったとする。そのときには、隠さずににちゃんと言う」 「ホントに?」 「ああ、ホントだ。を好きな間はいつまでも待つし、よりも好きになる子がいたらちゃんとに話す。オレは、に義理立てして自分の気持ちを押し殺すようなことはしない。自由に恋愛をする。 だから、今はオレはを好きで、がどういう答えを出すかわかんないけど、それを含めて待つから。前も言ったけど、無理せずゆっくりで良いからな?」 そう言って一は笑った。 一のその言葉での表情は少しだけ和らいだ。 笑顔が見られなかったのは残念だが、それはまあ、仕方ない。の中ではまだ整理しきれていないのだろう。 一は体を屈めてキスをした。 ホントは唇にしたかったけど、頬に。 は目を丸くしている。 まあ、今日はこれで我慢しよう。 言葉を奪われたら行動で示すしかなくなる。 そうなったら、ちゃんと止めることができるか甚だ疑問だ。こうやって、唇を避けてキスをするのだって、物凄くかなり我慢して一生懸命自制を掛けているのだから。 |
桜風
09.10.9
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