Dear my friends F 45





遊園地の翌週は、星太と北海道に行ったが、いつもテンション高めの母のそれが尋常じゃないほど高くて正直面倒くさかった。

弟に押し付けようとしたが、彼は彼で甘えるという処世術を身に着けており、結局テンションの高い母をなだめたり、弟の面倒を見たのは自分だった。


そして、新学期が始まった。


仕事や取材でなかなか聖帝にはいけなかったが、一度だけ短時間だが覗くことができた。

そこで見たものには嘆息を吐いた。

だから、言ったのに...

那智は止めなかったのか、それとも止められなかったのか...

今の状況を良しと考えているのだったら、やはり『子供』なのだろう。



さん!」

ある日の夕方、は近くのショッピングモールに足を伸ばしていた。

取材と自宅と出版社以外に足を運んでいないここ最近、これはまずいだろう、とリフレッシュをはかりに来たのだ。

そこで突然声を掛けれて振り返る。

「ああ、慧君」

今日は土曜日、か...

慧が制服を着ていないことからそう判断した。この仕事についているとどうも曜日感覚がずれる。

「お久しぶりです」

「んー、そう..なのかな??」

まあ、あまりにも顔を覗かせすぎたし、何より夏休みにも会っていたのだから久しぶりという感覚になるだろうか...あれから1ヶ月くらいなら確かに経っているし。

「あの..」と慧が話を続けようと声を掛けた。

「何?」

「あ、えっと...な、那智文庫。そう、那智文庫の別のシリーズを生徒会室に持ってきていますので、よろしければ、聖帝にいらしたときには声を掛けてください」

「あ、ホント?わかった、ありがとう。今度行ったら生徒会室に顔を出すね。じゃあ」

そう言っては踵を返した。

しかし、その瞬間視界の端に映った慧の表情に思わず足を止めた。

「...ねえ、慧君」

「は、はい!」

帰るものと思っていたが足を止めて声を掛けてくる。驚いた慧の返事は少し大きな声になった。

「今日は、ここに用事があってきたんだよね?」

「ええ、まあ...」

「終わった?」

の言葉に「はい」といって慧は頷く。

「んじゃ、お姉さんとお茶しましょう。あ、校則の禁止事項にはなっていないよね?」

「ええ、学校帰りだと問題はありましたが...」

そんなに厳しい校則だったかしら?とは首を傾げたがまあ今はそこが問題ではない。


こっちに引っ越してきてからは結構忙しくて行ってみたいなと思ったカフェにも足を向けることができない日々が続いていたので、今回はが行ってみたいと思っていたカフェに入った。『和風』が売りのカフェだ。

「なんにする?お姉さんがご馳走するよー」

が言うと恐縮したように慧が断ったが、「お姉さんの言うことをお聞き」といって黙らせた。

注文したものが目の前に並ぶ、ここでもう夕食を済ませてしまおうと思ったは結構ガッツリ頼んでしまった。

慧にも一応促したが、「家に帰ると母の作った夕飯がありますから」と断られた。

ああ、そうか。

お母さんがご飯を作るのが一般的なんだったな、と思い出す。

それなら、無理に軽食を取らせる必要はないか...

「それで?」

が促す。

「はい?」

「慧君、何か言いたそうだったから誘ってみたんだけど?」

の言葉に慧は驚き、断ろうとして..断れなかった。

何か違う、と思っている。

いや、自分は間違っていない。正しいことをしているのに、どうにもそれが違うような気がしてならない。

「アンシャンレジウム、をご存知ですか?」

「絶対王政、だね?」

すぐに答えが返ってくる。慧は頷いた。

「今、聖帝でそういわれています」

「慧君が?」とが聞くと彼は頷いた。何だ、気づいていたのか...

「それで、慧君はそういわれてどう思った?」

「畏敬の念をこめての言葉だと思っています」

はちょっと眉をひそめた。

「...絶対王政。中世にヨーロッパ各地で絶対王政が敷かれて、それがどうなっていったかは慧君なら知ってるよね?」

P2の慧だ。歴史を知らないわけはないだろう。

慧は頷いた。

「抑圧ばかりしていたら反発はその分大きくなる。慧君、キミは何様のつまりなのかしら?」

の言葉が慧の胸に鋭く刺さった。

彼は目を見開き、言葉を失っている。

「慧君、キミは他の生徒と同じ生徒なのよ。どんなに優秀でも『子供』なのよね」

さんは僕があのA4と同じだと言いたいのですか!?」

これには心外だったらしく、慧は声を荒げた。

周囲の視線を集め、慧はわざとらしく咳払いをした。

「同じよ。慧君、キミがどんなに優秀でもね、子供でしょう?違う?」

「違います!僕はもう子供じゃない!!」

「でも、慧君のバイブルになっている日本国憲法の上では、キミは未成年で子供でしょう?」

「そ..それは...それは、詭弁です!僕は努力を怠らず、自分を律して手を抜かず生きてきました。それとあの努力を怠り、手を抜き、我侭放題のA4と同じと言われるとは...貴女は僕の名誉を傷つけたことになります!」

は苦笑した。

「な、何が可笑しいんですか!!」

「ねえ、慧君。世の中、勉強以外にも大切なことがごろごろ転がっているの、知らない?」

の言葉に慧は目を丸くした。

その表情を見てはふわりと微笑む。ああ、子供だな、と。









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桜風
09.10.9


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