Dear my friends F 47





噂で慧が権限を返したことを聞いた。

しかし、その権限を返還するのを検討していた間にちょっとした問題が起きてしまい、結局それがきっかけとなって権限を返還した形となった。

理事長、というか学校側としてそれはやはり意外だったらしく、職員室に居た彼らからは他の先生たちの反応を聞くことができた。

一人だけ、大して反応をしていなかった教師が居たことも聞いた。加賀美のことだった。



慧が帰ったあと、「で?盗み聞きも優秀な教師としての嗜みなんですか?加賀美先生?」とがひょいと顔を覗かせて声を掛ける。

慧が座っていた後ろの席には加賀美が座っていたのだ。

「な!?いや、その..席が...」

「ありましたよー。もちろん、このお店は禁煙席しかないから、どこに座っても同じだったと思いますけどね?」

「...いつから気づいてたんだYO」

バツが悪そうに加賀美が言う。

「先生がそこに座ったときから、です。いいから付き合ってください」

そう言って席を移動させた。

自分はまだ食事が済んでいないから付き合わせてしまえといった考えだ。

腕を引っ張られて加賀美は渋々の向かい、先ほどまで慧が座っていた席に腰を下ろした。

「見張り役ですか?」

「んなわけねぇだろ。たまたま店に入ったら方丈とが居たから、ちょっと気になったっていうか...」

確かに、話を盗み聞きして報告しようと思っていたが...

「っていうか。お前は何で『見張り』って単語を出してんだよ!身に覚えでもあるのか!?」

「まったく、これっぽっちも。けど、GTRの皆様には警戒されているようなので。理由は..まあ、わたしが取材していることが怪しいんですかね?」

ギクリ、と加賀美は顔色を変えた。

「まあ、複数の学校の取材をしているから引抜とか思われても仕方ないと思いますけど...さっき、慧君と話した内容を一部始終聞いていらっしゃっていましたから、繰り返しになりますけど。わたしにとっての唯一の母校は聖帝です。それを貶めるなんて、どうしてするんですか?」

ぞくりと悪寒が走る。

何だろう。言葉も、雰囲気も彼女は穏やかなものに見える。

だが、その穏やかに静かに告げられた言葉には何か殺気のようなものを感じた。

「...なんでアイツに権限を返せって言ったんだよ」

「明言はしていませんけど。彼が考えてそうする可能性は出てきたかもしれませんけどね?」

「茶化すな、誤魔化すな。どういうつもりだ」

「...加賀美先生は本気であの子にアレだけの権限を与えて大丈夫だとお思いですか?たった18歳の子供に、同じように未来を模索している子の指導や監督、処罰。できると思ってるんですか?」

の目は真剣だ。

「そ、それは...足りないことろは教師がフォローをしてやれば済むことだろう?」

「今どれだけ加賀美先生は方丈慧君のフォローをされていますか?おんぶにだっこをする必要はないけど、わざわざ大きな荷物を背負わせる必要はないでしょう」

加賀美は少し黙り込んだ。

自分としてもあの生徒会への措置はどうかと思う節があった。彼女の言うように彼らもまた生徒で、子供だ。

どんなに優秀でもやはりあそこまでの権限を持たせればそれに振り回されてしまうことくらい想像に難くない。

「あいつ、返すと思うか?」

「さあ?名誉欲が結構強いみたいだから。褒められて当然みたいなところがちょこっとある子ですからね。ただ、馬鹿でもないし愚かでもないから答えは出すと思いますよ。ちょっと、純粋で真面目すぎるだけですからね」

「...それ、同感」

加賀美はそう言ってへっと笑った。

そして、ふと何かに気がついたらしく、そわそわし始めた。

「?加賀美先生?」

「い、いや!何でもねぇ!!何でもない。そう、何でもない...」

呪文のように「何でもない」を繰り返す。

変なの、と思いながらは食事を続けた。

どうでも良いが、冷めて美味しくなくなっている。

「...ちゃんと残さず食えよ」

狼狽していたはずなのに、立ち直ったらしい加賀美が声を掛けてきた。

「食べますけどー。冷めちゃったので美味しくなくなってしまいましたー...」

ツンツンとフォークでそれをつつくに加賀美はため息を吐いた。

なんだか突然ガキみたいだなぁ...

先ほど慧の事について語った人と同じだとは思えない。









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桜風
09.10.16


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