Dear my friends F 48





10月といえば、文化祭だ。

自分たちのときは、喫茶店だった。

翼が初めて手作りというものを経験したのもその文化祭だった。

懐かしいぁ、ときょろきょろと周囲を見渡しながらは校内を歩いた。


慧からは携帯に連絡があり是非とも文化祭の劇を見てほしいとあったので体育館へと向かう。クラスZとクラスAの合同劇といっていた。

席は、瑞希が取っていてくれた。最前列。

いわく、「朝からずっと取っておいたよ」だそうで、朝からずっと椅子に寝転がっていたのだろう...

色々と迷惑だろうに...

それでもが「ありがとう」と礼を言うから瑞希は満足して迷惑を掛けたことはこれっぽっちも気にしない。

劇は、ロミオをジュリエットっぽいものだった。

脚本は慧が書いたと前に言っていた。

...那智文庫か。

元ネタが何となくわかっては肩を落とした。

あれは、元となる童話を知っているから楽しいのだ。パラレルな物語というか、とにかく本作ではないと知っているから娯楽として楽しめる。

だが、これは...

というか、誰も突っ込まなかったのか...!

は隣に座っている瑞希を見上げた。

寝てる。

もう片方の隣の悟郎を見た。

楽しそうだ。

まあ、楽しんだ者が勝ちなんだろうな...

いつものように、諦めた。


劇は、しっちゃかめっちゃかで終わった。

アドリブに次ぐアドリブでもう原形をとどめていない。そんな劇。

まあ、楽しかったからそれはそれでよかったと思う。彼らにとってもいい思い出だろう。

劇が終わり、クラスZのコスプレ喫茶に行ってみようと思ったが、殆どの生徒が劇のほうに借り出されていたので、たぶん、今は忙しいだろうと思ってもう少ししてから顔を出すことにした。

「懐かしいね」

もう席を取っておく必要がなくなったのと、と2人と1匹で校内を回れることが判明した瑞希はと手をつないで歩いている。

「そうだね...でも、は聖帝の文化祭を体験してない」

ああ、そうかとは今更ながら思い出す。

まあ数時間程度は体験しているが、途中退場したのだ。

その理由になったやけどのあとがまだ残っていることは、瑞希にも悟郎にも言えない。

怒られるし、下手をしたら暴走しかねない。

「しっかし、あの垂れ幕何?」

「成宮が、必死なだけ」

成宮はに嫁になれと言った事がある。

しかも、自分の目の前で。

ちょっとムカッとしたが、「はっ」と笑ってはその言葉を切って捨てた。「余所をあたって」と。

あまりにもばっさりと切られたので彼はぽかんとした。そのときの表情にはショックを受けたとかそういう感情は見えず、本当に驚いただけだったようだ。

「そういえば、星太。合格したね」

物凄く今更だが、と思いながら瑞希は話を振った。

「そりゃ、瑞希とハルとわたしが教えて落ちたら諦めろって言うしかないでしょう」

笑ってが答えた。

瑞希としてはと一緒に居る時間を星太の勉強を見るのに少しでも割かなければならないのはやっぱりイヤだったけど、星太も飲み込みは悪くなかったから教えていていらいらすることは少なかった。

これは、清春も同じだったらしい。

逆にはいらいらしたそうだが、それはもしかしたら星太が気を引きたくてそうしたのかもしれない。


文化祭は展示クラスや模擬店クラスと色々とあり、興味があるものは全部回りたいとが言うので瑞希も眠いのを我慢して一緒に回った。

ガンッと大きな音を立てて瑞希のおでこが赤くなる。

「瑞希!?大丈夫??」

は慌ててうずくまった瑞希に合わせてひざを突く」

「......痛い」

「ああ、高校卒業してもまだ伸びてるもんね...」

眉を八の字にしてが応える。

ああ、わかったんだ、と瑞希はちょっぴり嬉しくなったが、やっぱりおでこが痛い。

「ちょっと冷やす?」

そう言っては駆けて行った。

「と、とげー...」

トゲーが心配そうに肩の上をうろうろとした。

体育祭のときののように熱を持っているだけならぴたりと張り付いて冷やすこともできるが、今回の瑞希はそれだけではなく、打っているから自分が乗ったら痛いに違いない。

しばらくしてが戻ってきた。

「ほら、当てて」といって濡らしたハンカチを渡してくる。

「うん、ありがとう...」

そう言って瑞希は受け取ったハンカチをおでこに当てた。

模擬店となっているそのクラスに入るのは諦めて校庭に出た。幸運なことに空いているベンチを見つけてそこに腰を下ろす。

「大丈夫?」

「うん......ねえ、

瑞希が沈んだ声で名前を呼ぶものだから、は心配そうに顔を覗き込む。

「ど、どうしたの?痛い?救急車要る?」

「そこまで痛くない。けど...僕このままずっと大きくなって成長が止まらなかったら......どうしよう」

真剣にを見ながら瑞希がいった。

はきょとんとしていたが、「うーん」と唸り始める。

「とまると思うけど、止まらなかったら...」と呟いている。

と会話ができなくなるかも」

「じゃあ、電話をすれば良いんじゃないかな?どんなに遠くでも会話できるよ」

「目の前にいるのに、肉声が聞こえないのは......イヤだ」

「んー...じゃあ、瑞希が物凄く大きくなっても良いように腹筋鍛えるよ。大きな声を出すには腹筋でしょ?」

はそう言って笑う。

半分冗談、半分本気の瑞希の言葉にもそのようにして答える。

「僕、ちょっと眠い......」

「30分だけだよ?クラスZの喫茶店に行かないと、後で怒られるから」

笑いながらはそういった。

「うん」と瑞希の口から漏れた声は既に眠りの最中のため息にも似ていてすぐにの肩に瑞希の体重がかかる。

すやすやと瑞希の寝息が聞こえる。

「とげー...」

トゲーも眠いのか、の膝の上に降りてきた。

「いいよ、トゲーも眠っちゃいな」

に言われて「とげぇ...」とやはり寝息なのかわからない返事をしてトゲーは動かなくなる。

気温が高いのは夏の名残りだが、風は乾いていて気持ちがいい。

欠伸をかみ殺しては空を見上げた。春眠暁を覚えずというが、秋だってそれなりに良い気候だ。

瑞希を起こす大役があるため、はそのまま眠りに落ちるのを堪えて過ごした。









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桜風
09.10.16


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