Dear my friends F 51





天気予報に雪マークがちらほらと表示されるようになってきた。

はカレンダーを見る。

ここ数日はよく電話がかかってくる。一の母親から。

が会いたいと思ったため、夏に連絡を入れたら今度年末に一と共に彼の家族が居るであろうオーストラリアに行くことになったのだ。

一のサッカーリーグの関係もあるため、日程調整をしているところだ。


「そういえば」とは呟く。

そろそろ聖帝舞踏祭の時期だ。

雪がチラチラと舞う中、ダンスをしたことを思い出す。

「勇ちゃん、か...」

そういえば、アレが初めての告白だったな...

あのときは恋とか愛とか全く考える余地はなかった。

もしかしたら、もう少し遅く彼に気持ちを告げられたら今の自分は違ったのだろうか...

歴史に『たら』も『れば』もないという。

そのとおりだと思うが、それでも思わずには居られないのが人間で、それはもう仕方のないことなのだろう。

それに、今となっては勇次とは『とても良い友人関係』というのをガッチリと築いているのだ。それで十分だ。

お互い、社会人として尊重しあい、尊敬しあっている。

1年位前に言われた。

「僕は、ちゃんに振られて良かったよ。男女の関係って修復は難しいけど、友情は男女の関係ほどじゃないし」

別に、彼との友情が壊れたとは思っていない。

しかし、彼には後ろめたい過去があり、それを克服するのに少し時間と労力が必要だったのだろう。

現に、それを克服して一とはまた『親友』と呼べる間柄になっていると聞く。

それを聞いたとき、はとても嬉しかった。

また2人がサッカーをすれば良いのに、とも思ったがさすがにそれはないようだ。



「あれ〜?サン?」

振り返ると那智だ。

「おやおや。学校は?」

「休みの日も学校に行くって面倒くさいんだよね」

「お兄さんは行ってるんじゃないの?」

が言うと那智は機嫌が悪くなる。

「...なんで成宮なんか頼るんだろう」

いきなりそういう話をされても、と少し困った。

「あれ?B6から聞いてない?」

「何を?」とが言うと那智はため息を吐く。

「聖帝舞踏祭。理事長が横槍入れてきたんだ。会場となるはずだった講堂の改修工事を子の間から突然初めて...」

「けど、あのイベントって生徒の手で作るものでしょう?『大人』が口出ししちゃいけないって言う...」

那智は不機嫌に頷いた。

「ふーん...感想は?」

が意地悪く言う。

「あんたが言ったとおりかな、って答えたら満足?」

「別に?那智君がこうやって腐っていてもわたしは何の得もないし。お兄ちゃんは賢いって褒められないところが、子供かな?」

「賢い、だと!?」

那智が視線を鋭くした。

「ええ、賢いじゃない?しかも、柔軟性がある」

の言いたいことは分からないでもないが、簡単に納得できない。いや、納得したくない。

あの成宮と兄が手を組んで聖帝祭を成功させるために協力していることが面白くない。

自分がそう仕向けて兄が動くのなら、それはいいことだ。

絶対に兄の不利になることはないし、何があっても自分が対応できる。

だが、今のやり方だと不測の事態が起こったらそれに対応できるかどうかわからない。

これでは、何かあっても兄が頼ってくるのは自分ではない誰かになりかねない。そうなると、彼に手柄が行くように動けなくなる。

「相当重症だねぇ...」

が呟いた。

「何が!?」

苛立ちを隠さずに那智が言う。

「那智君って、天才でしょう?」

の言葉に目を丸くした。

「どういう、意味で?人をだますのに?」

「じゃなくて、多才なんだろうね。しかも平均以上。逆に、慧君は努力をしたぶんだけしか伸びないタイプ」

「慧を侮辱するのか?!」

益々喧嘩腰になる。

「侮辱はしない。努力の人って可能性が無限にあると思うから。まあ、ただの『可能性』で終わる場合もあるけどね。けど、那智君は違うんでしょ?」

那智は答えず、じっとを見ている。探るように、用心深く。

この表情を見る限り、学校で見る人懐っこい顔は想像できない。

は苦笑した。

「天才って、孤独なんでしょ?キミは、慧君に遠慮してかどうかまでは分かんないけど...全力が出せていない。だから、こう..もやもやするんでしょう?不完全燃焼って言うか...」

の言葉は、日ごろ自分が感じているそれだった。

「ガス抜き、してみなさい。まあ、周囲に物凄く迷惑がかかるでしょうけどね、ハルみたいに」

困ったように笑っては言った。

清春は天才だ。

だが、天才という存在はこの世にどれだけ居るだろう。

天才は天才ならではの悩みがあり、それを分かち合える存在が居ないが故に孤独だ。

ただ、清春には『イタズラ』があった。それでも不完全燃焼だったろうが、多少のガス抜きにはなっただろう。

何より、高等部には清春が苦手とする衣笠が居た。そういう存在もきっと貴重だったに違いない。

教科の担当にもならなかったため、2年まではそこまで構わなかったらしいがそれでも張り合いはあったのではないだろうか。瞬という幼馴染や他に自分を含めてB6と呼ばれる存在が、『仲間』があった。

きっと完全な孤独ではなかったのではないだろうか。彼を『天才』と分かっていた仲間も居たのだから。

しかし、那智にはそんな存在は居ない。

勿論、那智がそれを望んでいなかったことも原因だろうが...

「それにね、那智く..」

まだ言葉を紡ごうとしたら那智の唇に塞がれた。

「しゃべりすぎ、アンタ...」

苛立たしげに那智が言った。

「...話は戻すけど」

「って、戻すのかよ!何だよ...普通こういうことされたら気まずいとか」

あれ?似たようなことを聞いたな、昔...

そう思いながらも「猫に舐められたと思えば」と返す。

「あーあー。ちょっと不愉快になったから遊んでこーっと。じゃあな、サン」

そう言って那智はふらりと雑踏の中に消えていった。

「男って、口で勝てないとああいう実力行使に出るんだねぇ...」

でも、なんと言うか...

那智のははちょっとやだった。










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桜風
09.10.23


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