| 船先で頭を冷やしては会場に戻った。 勝負の途中にが居なくなったからとりあえず共同戦線を敷いて悟郎と瑞希は捜索に当たっていたらしい。 一が怪しいと思ったら一人で戻ってきたからこれは違うのか、と納得してまた捜索していたそうだ。 戻ってきたの肩は赤くなっていた。 冷えている証拠だ。 瑞希が慌てて駆けてきて上着を掛ける。 悟郎はドリンクを取ってきた。あったかいのも用意されていた。 「ちゃん大丈夫?」 「うん...」 自分はそんなに寒いと感じていなかった。 「、肩を冷やしたらダメ...関節は冷えやすいから、気をつけないと」 「剛速球が投げられなくなるもんね」 いやいや、そういうことじゃないだろう... かいがいしくの心配と世話をしている瑞希と悟郎の様子を見守っていた周囲は思わず心の中で突っ込みを入れた。 「あー、方丈弟」 会場を見回っていた那智を見つけて一が近づく。 「なんですか?草薙先生」 「あんまりにちょっかい出すなよ」 軽く、世間話の導入部分的なしゃべり方にもかかわらずその声には威圧感がある。 「...草薙先生は、サンが好きなんですよね?」 「ああ、そうだけど?」 ここでも軽く返す一に那智は眉間に皺を寄せた。 「あんなにいろんな男に良い顔をしている人を好きって、大変でしょうね。めんどくさそー」 那智の言葉に一は苦笑し、「この世界を嫌いって言われるよかずっとマシだよ」と去っていった。 オレ、何かしちゃったのかなぁ... 一は首をかしげる。 なんと言うか、先日の聖帝祭以来のが少し妙だとかそういうことなのだ。 怒っているわけでもなく、こう..微妙に距離を置いてる感じがするというか... 今は空港に向かう車の中で、は窓の外を眺めている。 「...って」 「な、なに?!」 「...いや、って免許持ってないんだっけ?」 何だろう。本当に変だ。 「あー、持ってるよ。国際免許ね」 「国際?!どこでも乗れるのか??」 「...乗れない国もあるはずだけど、大抵。一って日本で取って、イタリアで取ったから2回試験受けたんだっけ?」 1回で済むものがあると知っていたらそっちにしたと思う、という言葉を呑んで頷いた。 「窓際、通路。どっちが良い?」 「窓」 に窓際を譲り、一は隣に座った。 「二葉ちゃんと三希ちゃんのお土産、ちゃんと買った?」 「おう!多智花からGEのグッズをもらったんだぜ」 満足そうにニッと笑ってそういう。 そういえば、八雲はサインはNGだとか言っていた。別にほしいと思ったことは一度もないが、前もって教えられたのだ。 「ってオーストラリア行った事あるのか?」 「初めて。ちょっと楽しみ」とは笑い、「オレもだ」と一も笑った。 ホントに初めてなんだ... はおかしくなって笑った。 空港に着くとそこは夏だった。 一応コートの下は薄着で行っていたのでコートを脱ぐ。 「おばちゃんは?」 がキョロキョロと周囲を見渡した。 「二葉ぁ!三希ぃ〜〜〜!!」 物凄く甘い声を出して一が駆け出した。荷物を置いて。 「え、ちょ!ハジメちゃん!!???」 さすがに荷物を置いて追いかけるわけには行かず、かといって2人分の荷物を持って走れるほど体力自慢でもない。 パッシーン!と少しはなれたところから音が聞こえた。 顔を上げて見ると、一が頭を抑えてうずくまっている。 「...おばちゃん」 は苦笑して手を振った。 一の母親も手を振り返してきた。彼女はを指差し、一が慌てて戻ってきた。 「わりぃわりぃ...ゴメンな?」 戻ってきた一はの荷物も一緒に手にとり今度は一緒に一の母親の元へと向かった。 「ったく、アンタって子は!!」 「悪かったって!だって、二葉と三希が迎えに来てくれてると思わなかったんだから!」 「なー?」と一が妹たちに同意を求めるが「お兄ちゃんを迎えに来たんじゃないよ!」と口々に言われてへこんだ。 「...初めまして、二葉ちゃんと三希ちゃん」 がそれぞれの顔を見ながら挨拶をした。 双子だから間違われることが多いのか、間違わずに名前を言われた2人は目を丸くした。 「お姉ちゃん、分かるの?」 「まあねぇ。あなたたちのお兄ちゃんが新しい写真が送られてくるたびにわたしに見せてくれてたから...覚えちゃった」 笑って言うの言葉にきょとんとして、兄に胡散臭げな視線を向けた。 「お兄ちゃん、暑苦しいっていつか友達にも言われちゃうよ」 声を揃えて妹たちが言う。 「は言わないよな?」 一が自信満々に言うから「さあ?」と返した。 案の定、物凄く沈んだ。 「ウソだよ。慣れた、慣れた」 笑って訂正するの言葉は、自覚してかしないでか微妙にフォローしていない。 |
桜風
09.11.6
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