Dear my friends F 60





2月の半ばに聖帝へいくと、掲示板に掲示してある文書に少なからず驚いた。

A4のことはひとまず良いのだろうか...

「ああ、さん」

掲示板の前でたたずんでいるに声をかけたのは上條だ。

「ああ、上條先生」

お久しぶりです、と頭を下げる。

彼もそれを返して「少し、お時間がよろしいですか?」と聞いてきた。

特に予定もないので頷くと理事長室へと案内された。


「ご足労頂いて、申し訳ありません」

そういって佐伯は頭を下げる。

「いえ。それで、何の御用でしょうか...」

が促すと彼は那智のことを話し始めた。

が掲示板で見たのは那智の停学についての通知文だった。

なぜ彼を停学にしたのか、佐伯自らが語る。

何でここにきて猫を被りきらなかったか...

はため息を吐きたい気持ちを抑えて神妙な面持ちで話を聞いていた。

さんが我が校を取材していらっしゃる中での醜聞で...方丈君はとても優秀な生徒だと思っていたのですが、こちらとしても騙されたという形になりまして...」

という言葉で締めくくられた。

「ええ。私としても、母校の品性を落とすような行為は見過ごせませんから」

はそう答えて頷いた。

佐伯は理解を得られたと思い込み、気を許したように笑った。

も微笑み返す。



理事長室を辞しては廊下を歩いた。

那智は学校に来ていないから良いが、慧は学校に来ているだろう。

あの『生真面目』が服を着て歩いているような子だ。

は気になってクラスAへと足を運んだ。


案の定、慧は孤立していた。

誰も表立って責めることはせず、遠巻きにこそこそと陰口をたたいている状況のようだ。

ポン、と肩をたたかれた。

驚いて振り返ると口に人差し指を当てた瑞希が立っていた。

彼はの手を引いてクラスAの教室から離れる。

たちが廊下の角を曲がったところで、別の声がした。真奈美だ。

こっそりと覗き込んでみるとどうやら真奈美が慧を庇っているようだ。

「人間って..簡単に人を裏切る」

瑞希が低く呟いた。

「裏切る人もいるけど、裏切らない人もいる。第一、あのクラスAの子達は慧君たちの『本当の友達』じゃないでしょう?ただのクラスメイトにそこまで求めるのはどうだろうね」

の言葉に瑞希はうつむき、「そう..だね」と呟いた。

そして、慧にとっても『本当の友達』という存在があり、彼らが慧を迎えるために教室に入っていく姿を見ては嬉しそうに笑い、瑞希も口元を緩めた。

信じられる存在。

それが居るというのは、とても幸運なことだと瑞希もわかっている。

「ああ、そうだ。ちょっとに相談したいことがあったんだけど...」

瑞希が自分に相談なんて、と不思議に思いながらは頷いた。

慧を引き連れてA4たちはアホサイユへと向かうらしいと分かったため、瑞希ともアホサイユへと向かった。


さん...」

アホサイユを訪ねてきた人物を見て慧は呆然と呟いた。

「こんにちは」とは挨拶をし、瑞希の様子を確認する。

「多智花、こっち...」

手招きする瑞希に八雲は寄ってきた。

「何?デタラメ先生」

うわ、何かぴったり!

はそう思って感心していると瑞希がじっと見下ろしてくる。

「僕、デタラメじゃない」

「うん、ごめん...」

デタラメ、というかちょっとずれているというか、そういう感じだもんな、と心の中で訂正した。

は、人の事いえないと思う...」

の考えを読んだかのように、瑞希は的確な突込みを静かに入れた。

「えーと、で?何?」

2人のテンポの悪い漫才のような会話を目の前に放ったらかしにされた八雲が用件を促した。

「あ、うん...、多智花、声が出ないんだ」

は不思議そうに瑞希を見上げる。だって、八雲は現に今声を出している。

「...うん、こうやって普通の会話をするだけなら大丈夫なんだけど。けど、少し大きな声を出そうとしたり、少し高い声を出したら..ケホッゴホッ」

少し声量をあげると途端に咳が出てむせてしまうようだ。

「えーと...」

の所見、聞かせて」

「瑞希みたくIQが高いわけでは...」

「雑学なら、も結構いけてる口」

瑞希にそういわれて肩を竦め、八雲に向き直った。

「ちょっと口あけて」

に言われるままに八雲は口をあける。

「普通の声量で、声を出して」

「あー」と八雲が声を出す。は小さく首をひねった。何か、変。

「じゃあ、だんだん大きくしてみて」

「あーーー、ケホッゴホッゴホッ」

「...八雲君、薬飲んでる?若しくは、スプレーとか」

難しい顔をしてが言うと「あ、うん。上條先生からもらった薬がある。ちょっと前までは効いてたんだけど」と返してそのスプレーを取りに自分のかばんの傍へと向かう。

「やっぱり、も思った?」

「うん。のどの筋肉の動きがおかしいよ。麻酔みたいなので動きを悪くさせられているんじゃないかな?」

コソコソとと瑞希が会話をしていると八雲がスプレーを持ってきた。

「じゃあ、これは没収ね」

「え!?すごく効くのに!!」

「今は効かないんでしょ?」

の言葉に八雲は渋々頷く。

「代わりに、これ。1日1個。用法用量を守って...あと、瞬がリハビリを兼ねてボイストレーニングをしてくれるって言ってたから、後で瞬に詳しい話を聞くように」

そういって瑞希が八雲に飴玉の入ったビンを渡す。

は驚いて瑞希を見上げた。

「大丈夫」と小さく呟き、頷いた瑞希にも頷き返す。

このスプレー、解析してもらおうかしら??

頼むなら、やはり国内で済ませないとまずいよな...

そう思い、頼るならあの人か...と多少分野は違うが、実験室等々を備えた施設で働いている母親を思い浮かべて小さくため息を吐いた。









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桜風
09.11.13


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