| 那智の停学を受けて例外として生徒会長を続けていた慧たちも引退となり、生徒会長の後任は吾妻となった。 これは、もともと決まっていたことだ。慧が引退すれば吾妻が生徒会長。 だから、何も不都合はない。 学校側としてはそういう言い分だ。 吾妻たちもそれを静かに受け入れて生徒会として生徒の模範となるべく活動を行っていた。 慧たちとは決別したかのように見えていた。 そんな中、理事長に生徒会から提案があった。 卒業を前に、講演会のようなものを生徒会で主催したいという話だ。 講師は、この学園に足繁く通い、取材を行っているあのを迎えるといった。 「しかし、彼女はこのオファーを受けてくれるかね?」 「事前に内諾は得ています。この学園を卒業し、現在作家として活躍している先生としての講義をしていただける、と」 吾妻の言葉に理事長は鷹揚に頷いた。 こうしてまた、この学園の宣伝材料が増えていく。 今まで彼女は自分の存在をメディアなどを通して出すこともなく、謎の作家となっていた。 その謎が今回大々的に公表できるということか。 「では、メディアの方も...」 「いえ、それは許可いただけませんでした。彼女は自分の『後輩』に対して話をするのだから、と」 勿体無い。せっかくのチャンスだったのに... しかし、そうは言っても生徒たちの口からこのことが漏れてしまうだろうし、そうなればこの学校の広告塔として彼女を利用してしまえばいい。 「だが、かん口令をしいても生徒たちの口から漏れる可能性はあるのではないかね?」 覗うように言うと 「ええ、それは彼女も了承済みです。そうなるものは仕方ない、と」 黙認するというなら、こちらが情報操作するのも有りか... 当日メディアを呼ぶことはできなくても別の方法でアピールすることはできそうだ。 「許可しましょう」 理事長はそういった。 「ありがとうございます」 吾妻は深く頭を下げた。 「方丈君たちのように、一般生徒の期待を裏切らないように」 「...はい」 理事長の言葉に少し間を置いて吾妻は返事をした。 まさか、本当にこんなにうまくいくとは思わなかった。 吾妻は理事長室から生徒会室へ帰りながらそんなことを思っていた。 この講演会の話を持ち出したのは意外なことにB6からだった。 自分は方丈兄弟と幼馴染で、彼らがどんな人かというのはこの学園で一番良く知っていると自負している。 それは決して間違いではないだろう。 那智の性格も知らなくもなかったし、ああいうことをしていてもおかしくないと思えるくらいに親密な友情という名の絆を持っていると思っている。 まあ、那智にしては、下手なことをしたなとは思ったが... 那智の停学については、どうかと思うし、証拠としてはもの凄く弱いものだったはずだ。 それなのに、無期限の停学だなんて... しかも、この時期に。 自分に従順に従わない者への制裁としか思えない。 そしてその制裁は理に適っているものではないと思う。 那智の処分を受けて慧もだいぶ参っていた。 それを見て吾妻も何とかしたいと思っていたが、何をしたらいいかわからず正直もどかしく思っていたのだ。 そんな中で清春が声をかけてきた。 時間を指定し、その時間に電車に乗るように、と。 意味が分からないと思った。 しかし、彼の言うとおりその日は電車に乗ってみた。 ふと、知っている人が居た。 彼女は自分に気がつき、にこりと微笑む。 吾妻は首を傾げながら彼女、に近づいた。 「こんにちは。お久しぶりですね」 「だね。隣、どうぞ?」 そういって彼女が勧めるため、吾妻も席に着いた。 「最近は聖帝にいらっしゃってないんですか?」 「ああ、生徒会室によってないだけ。あと、時間も短いからね」 受験生に気を使っているのかな、と思って吾妻は頷く。 それからしばらく話をしているとが立ち上がった。 「じゃあ、ね。あと、よろしく」 そういって彼女はその駅で降りた。 吾妻は何で清春がこの電車を指定したのか分からないまま、電車を降りて帰宅した。 家に帰ってやっと気がついた。 ポケットに手紙が入っていた。 古くから親しまれている日本の文様の渋い便箋だ。 不思議に思ってそれを開いて目を丸くする。 「あの人たち、何なんだよ...」 そう呟いて苦笑した。 その手紙には、生徒会により講演会のような、全校生徒を揃えられる会を設けてほしいというものだった。 なぜそういうものを開いて欲しいというのかは書いていない。 だが、それをすることで自分が、方丈兄弟が不利になることはないと思った。 そんなことはどこにも書いていないが、彼女と今まで会話した感じからそう思った。 信じてみることにした。 自分の先輩たちを... |
桜風
09.11.22
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