Dear my friends F 63





『ところで皆さん。今、私がお話したとおりこの聖帝学園は私にとってとても大きな存在で、そして後輩たちにも長く受け継いでいってもらいたいと思っている場所です。
しかし、今この学園がどのような状況にあるか皆さんはご存知ですか?いえ、たぶんご存じないでしょう。
特に生徒の皆さんは疑問すら浮かんでいないかもしれません。
今、この学園が直面している危機。それは...』

佐伯が呆然とした。

彼女は何を言い出すのだ?

この学園の危機...

そして、思い当たったことがある。

佐伯はすぐに上條に視線を送り、彼は頷いた。

『この学園は、現在。とある人の理想という名の野望のための踏み台にされそうにな』

突然マイクが切れての声が講堂から消えた。

演台からステージ袖を見るとそこにはクマたちが居た。コードが色々と抜かれている。

はため息を吐き、大きく息を吸う。

「この学園は現在とある人の理想という名の野望のための踏み台にされそうになっています。
佐伯理事長、あなたはこの学校の改革という名の独裁で何をなさろうとしているのですか?」

腹筋に力をこめては肉声でこの講堂に自身の言葉を響かせた。

のマイクが切られたと気づいた瞬間、清春が駆け出していた。

別の電源をすでに用意しており、それは確確保しておかなくてはならない。

ほかのB6もそれぞれ自分に出来ることをするために駆け出す。

「後輩たちよ、ゴロちゃんたちの姿をとくとご覧あれ!」

悟郎は傍に居たA4とP2にそう言ってウィンクをしてその場から離れる。


「皆さん、これをご覧ください」

壇上ではが話を続けていた。

瑞希が機器を操作し、スクリーンには文字が並んでいる。

「これは、他校で取材をした中で明らかになった事実です」

スクリーンにはたくさんの学校名が並んでいる。

しかし、その並んでいる名前の学校はすでに存在がなくなっている。

昨年度で閉鎖した学校ばかりだ。

それにいち早く気がついたのは3年F組の生徒たちだった。彼らが昨年まで通っていた学校名が並んでいたのだ。

「何で!?」「うちの学校じゃねぇか!!」

彼らの声が届いたクラスからどよめきが起こり、それは講堂に広がっていった。

その学校の閉鎖理由などが表示されている。

「これは、この学校の元理事や学年主任など学校経営についての方針を決めることが出来る方たちから聞き取ってまとめたものです。

その中で非常に興味深い事実が..」

「やめたまえ!!」

壇上に理事長が上がってきてに鋭く言う。

ゆっくり理事長に顔を向けたは「なぜ?」と問うた。

「デタラメだ!これ以上この学校の品性を貶めるようなことはしないでもらいたい!!」

「その言葉、そっくりそのままついでに熨斗をつけてお返ししますけど?」

不敵に笑ってが言う。

理事長が何かを言いかけたそれを遮るようには言った。

「私、以前言いましたよね?母校の品性を落とすような行為は見過ごせません、と。まさか、自分はそんなことをしていないとお思いですか?他校に圧力をかけてつぶし、その学校からそれぞれ得意分野を持つ生徒を選んで入学させ、その結果、自分の意に沿わないものは切り捨てる。
それって、まったく品性のかけらもあったもんじゃないんですけど?」

「冤罪だ。第一、こんなことをして、私を陥れて...唯ではすまないぞ」

「お好きにどうぞ。ただ、ひとつ言えるのは..あなたの切れるカードが私にとってどれだけ有効か甚だ疑問、ということですか。
この数値をご覧ください。...上條先生、見覚えありますよね?」

そこには英単語と数字が並んでいる。

八雲に渡したスプレーの成分表だ。薬品検査をした場合、似たような結果がでる薬品の多いものを選んで作った。勿論、それぞれだと無害なものでも混ぜることによって化学反応により自分の目的としている症状を作り出せるようにはなっている。そのパターンはたくさんあり、それを割り出すのは至難の業だ。

それなのに、彼女は正確な成分を割り出している。

「わたしの素性もお調べになったのではありませんか?たとえば、両親のこととか」

の言葉に上條は顔を歪める。

日本に居る彼女の母親は彼女を『捨てた』存在として認識していた。それが誤りだったと、彼女は言外に指摘している。

「あと、疑問といえば...方丈那智君の処分です。厳しすぎませんかね?」

はそう言ってにこりと微笑んだ。

「何を言うのかと思えば...あんなチームを作っている彼は、この学校の生徒でいる資格はない」

「それって、確定なんですか?どこに、彼が作ったチームという証拠があるんですか?そういう友達がいることに対して、学校側が処罰を加えることが出来るんですか?学校は、交友関係にも口を出して、それを元に生徒を処罰できるんですか?まずは、口頭での注意から始まるものじゃないんですか?」

畳み掛けるように、ほかの生徒たちにも聞こえるようには理事長に問いを投げた。

那智は『ダイヤモンドサイン』というチームを作っていた。

それが明るみになったことで学校側から『無期停学』の処分を受けたのだ。

本人やB6の話によるとそれは事実らしい。

しかし、まあ...としてはそれを理由に停学というのはやりすぎだと思うし、正直気に入らないと思った。

もともと、明るみになったといっても証拠としては、街中のチンピラが持っていた写真のみだ。

それだけで断定し、処分をするのは行き過ぎだろう。一般的に考えて。

の言葉を耳にした生徒たちがざわりと騒ぎ始める。

それは再び波紋のように広がり、講堂の中の空気はざわめき始めた。

はクラスZの方へ視線を向ける。

そこには方丈兄弟が居た。

那智と目が合う。

彼は困惑しているようにを見ていた。何故庇うのか、と聞きたいようだ。

「理事長。あなたは学生の本分は学業だとおっしゃっていますよね?」

「当然だ。学生は学業があって、その他の部活動や学校外での活動などがある。学業をおろそかにするなど、愚の骨頂だ」

そう言ってクラスZを見た。

そして、その場に那智がいることに気がつき、驚く。

「では、方丈那智君が学業をおろそかにしていなければ、学生の本分を全うしているということになりますよね?交友関係がどうであれ」

理事長は答えなかった。

しかし、その沈黙は肯定と取れる。

「では、今この場で方丈那智君に対して口頭試問されては如何ですか?彼を無期停学にしたその理由はグレーだと思います。疑わしきは罰せず。日本の刑法の原則ですよ。
そして、学生の本分をきちんと身に着けているなら、問題はないのではありませんか?
...方丈君」

そう言っては那智を手招きする。

躊躇いがちに那智はステージに上がった。

またしても講堂の中がざわめく。

「さて、理事長。ここで口頭試問を。これだけ人がいれば証人に困ることはないでしょう?
ああ、もちろん、高校生が答えられるレベルの問題を出してくださいよ。大人気なく何年も只管その分野において研究していった末にやっと発見されるようなものではなくて。
もちろん、彼は受験生ですから、それについては、どの学校のレベルでも良いとは思いますけどね」

の言葉に理事長は口角を上げ、那智はを睨んだ。

根性見せなさいよ〜、とは口だけそう動かしてニコリと微笑む。

「やなやつ...」

那智は小さく呟き、そして理事長を見据えた。








Next


桜風
09.11.22


ブラウザを閉じてお戻りください