Dear my friends F 65





生徒たちにとって、少し消化不良な感じに臨時生徒総会は終了した。

勇次の登場により、佐伯は諦めたのかそのまま静かに講堂を去り、上條もそれにしたがって出て行った。

吾妻により生徒総会の終了を宣言され、生徒たちは担任の指示に従って教室へと戻る。

「そうそう。一、泊めてくれよ」

「ん?いいぜ。つか、オレ色々とお前に聞かなきゃならないことがたくさんあるんだけど!!」

一の言葉に勇次は笑う。

ちゃん、ありがとう」

「逆でしょ?わたしが勇ちゃんの『理事』っていう肩書きに目をつけたんだから」

笑って返すに勇次も笑った。

「いいんだよ。『聖帝学園』がなくなるのは、俺も嫌だったし」

「衣笠先生も、無理を言いまして...」

そう言っては衣笠に頭を下げる。

「いえいえ。かわいい元姪の頼みとあらば、ですよ。それに、彼の居所を突き止めたのはさんのお手柄ですよ」

「場所を突き止めたのは、永田さんですよ?わたしは、彼の存在を見つけて、あとの居場所とかは永田さんに調べてもらったんですから」

「いえいえ。言うなれば適材適所ですよ。そう言った『捜索』なら私の方が向いていただけです」

「...ねえ、ちゃん」

悟郎が恐る恐るに声をかける。

「ん?」と首をかしげては悟郎に向き直った。

「さっきの、キヌちゃんの持ってきた書類って...」

「不明瞭な会計処理があったのよ。結構巧みに隠してあったけど...で、その会計処理をした人の名前はわかったけど居場所は分からなくてね。まあ、そのお陰で『不正』をしていたっていう確信に繋がったんだけど。で、永田さんにその人の居場所を調べてもらって、場所がわかったから衣笠先生に説得に行ってもらったの」

聞くのが怖いけど、聞かずに勝手に大きな想像へと発展するのも嫌だった。

「...なんでオバケに説得に行かせたんだよ」

「だって、その人は昔、衣笠先生にマンションプレゼントした人だから。ほら、この学園に通ってたときわたしが住んでたあの」

と笑顔でが言った。

「やっぱり、ね。『知り合い』に説得してもらうのがベストかなって」

分かってて言っているんだろう。

そうだろう、きっと...

皆は口に出してそれを肯定されたらなんだかかなり嫌な気持ちになりそうなので心の中で自己完結をして次の言葉は飲み込んだ。


さん」

不意に声をかけられて振り返る。

そこには慧と那智が立っていた。

「あ、勇ちゃん。後輩後輩」

笑って慧を紹介した。

慧は慌てて頭を下げ、勇次も自己紹介する。

「あの、さん。那智がお世話になりました」

そう言って慧が深々と頭を下げる。

那智も不本意そうに小さくぺこりと頭を下げた。

「だーから、言ったでしょ!君も所詮は子供なんだから!あと、お兄ちゃんにちゃんと話しておきなさい。今回みたいなの、もう嫌でしょ?」

がそういうと「もうこんなヘマしないから」と那智が返す。

しかし、その頭はポカリと叩かれた。

さんが居なかったら、お前は僕と一緒に卒業できなかったかもしれないんだぞ!」

慧に叱られるのは相当堪えるらしく、那智はしゅんとなる。

「まあ、今回のは『ついで』だから。けど、『貸し1』ね?いつか返してよ」

は笑ってそういい、彼女の言葉に那智は思い切り渋面を作った。

嫌な人に借りを作ってしまったな、と。

「ハルに借りを作るよりは、まだタチは良い方だと思うわ」

笑って言うに「ンだと!」と清春が抗議の声を上げる。

「教室に戻りなさい。HRとかあるんじゃないの?」

に促されて慧たちは教室に戻る。

少し離れたところに真奈美の姿があり、と目が会うと彼女は深々と頭を下げた。



先ほどの生徒総会のお陰で学校の中は少しざわめいていたが、それもすぐに収まることだ。

裏庭の日向に座って人を待っていた。



名前を呼ばれて立ち上がる。

「瑞希。来てくれてありがとう」

勘の良い瑞希だからこれから自分の話すことは何となくでも察しているだろう。

しかし、それでも彼はここまで足を運んでくれた。

「...、好きだよ」

瑞希の口から紡がれた言葉に、思わず息を呑む。

は俯き、呼吸を整えて顔を上げた。

「ありがとう。わたしも瑞希が好きだよ。けど、瑞希と同じ『好き』じゃない。星太が好き、南先生が好き。それと同じ意味の『好き』。家族とか、友達とか。たくさんの人に向ける『好き』。
瑞希が向けてくれたそれで応えることができない」

瑞希は顔を歪めた。

分かっていた。

自分にとって彼女はとても愛おしい存在で誰にも渡したくない。自分だけのものにしたい、唯一の存在。

だが、彼女にとって自分は違った。

たぶん、『仲間』であり『家族』なのだ。

、ごめんね。僕、以外の好きな人が出来るまで、きっとこの先ものことが好きだと思う。だから、大人気なく邪魔することがあるかもしれない。頑張って我慢するけど、絶対にしないって言い切れない。
でも、僕はには幸せになって欲しいって心から思ってる。僕が、を幸せにしてあげたいって思うけど..今は出来ないみたいだから、頑張って我慢してみる」

瑞希の言葉を聞き、「ごめん」と言いそうになってその言葉は飲んだ。

その代わり、「ありがとう、瑞希」といって答えた。

「一に泣かされたら、ちゃんと言ってね?僕、すぐにでもを助けに行くから」

瑞希の言葉には目を丸くする。

「あ、図星?だよね...ちょっと腹いせに嫌がらせしてくるから。一と話をするのは、もうちょっとだけ待ってね」

瑞希はそう言い放って裏庭を後にし、そんな彼の背中をは呆然と見送った。









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桜風
09.11.27


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